光 118
その後の30分は地獄の30分だった。
動いたらせっかく寝てるのを起こしちゃうかもだし、がっつり鴉に身体を預けることも僕にはできなかった。
30分、僕はひたすらからの上で身体をガチガチにさせたままじっとしてた。
途中、鴉〜って居間に来た天ちゃんに、ぴかるん何してんの?ってめちゃくちゃ不思議そうに聞かれた。めちゃくちゃ真顔で。
あんまりしゃべると起きちゃうから、こそこそ事情を説明して、助けて〜ってお願いしてみた。
お願いは、予想通り無駄だった。
天ちゃんは僕の助けてのお願いをあっさりお断り後、寝てるんならいいやってすたすた台所に戻ってって、僕はまた鴉の上に取り残された。
クワってかーくんが小さく鳴いて、僕の頭にすりすりして慰めてくれた。
地獄の30分を終えて、鴉はちょっとすっきりしたような感じに見えた。
けど僕は。
僕は。
僕の身体はバッキバキなんだよ‼︎あっちこっちがバッキバキなの‼︎
僕は鴉に文句を言いまくった。
今日の朝ご飯はホットサンド。
食パンをホットサンドメーカーっていうのに乗せて具を乗せてまた食パンを乗せてプレス。
3分ぐらいでパンが焼けてできあがり。
っていうのが僕には初めてだったから、僕やるってやらしてもらってた。
さっきいっぱい鴉に文句を言ってから、僕は鴉と口をきいてあげてない。
だからだと思うけど視線を感じる。
そのたびに僕はぷいってそっぽを向いてる。視線の鬼ごっこ。
我ながら子どもっぽいって思うには思ってる。思ってるだけ思ってる。
僕のせいで寝られなくて、僕の肉布団で寝られた。
ならプラマイゼロでいいじゃん。
じゃ、ないんだよ‼︎
ぷいってしながら、僕は3人分のホットサンドをせっせと作った。
「あ、ぴかるん。昨日も言ったけどさ、今日は外出てもいいけど、暑いからあんまり遠くに行っちゃダメだよ〜?」
たまごは当然美味しくて、ハムとトマトとチーズもおいしくて、デザート用のチョコバナナもおいしくて、ホットサンド最高って僕はかじりついてた。
そしたら、天ちゃんが念押しみたいに言った。
口の中がいっぱいだったから、うんって返事をしてみたけど。
もう全然大丈夫だし。
そんな遠いとこじゃないし。
って、僕はちょっと思ってて。
「あの鳥居もダメ?まーちゃんが乗せてってくれるから大丈夫だよ」
ダメ元で聞いてみた。
「大丈夫だと思うんだけどさ、ちょっとずつにしとこ?身体を暑いのに慣らしながら」
天ちゃんは心配性。
鴉も同じく心配性。
何なら多分、かーくんもきーちゃんも。
みんなに反対されてる気がするのは、気のせいじゃないかも。視線がね。
心配、してくれてるんだってば。
そう自分に言い聞かせてたら聞こえた。天ちゃんから、意外な一言。
「オレもまだぴかるんと一緒に居たい」
「………天ちゃん」
オレも、まだ。
うわ。
うわ、だよ。うわ。
それ以上言葉が出てこない。胸熱ってこんなの。
僕がここで、ほんのちょっとだけ特別になれたような気持ち。
天ちゃんからの嬉しい言葉に、僕はすっぱり、今日あの鳥居に行くことは諦めた。
大丈夫、まだ明日がある。絶対ある。
ってことは、今日どうしようかな。
鴉の手伝いもいつもよりしたい。
その前に、仕返しもしたい。
「すぐそこでお昼ご飯食べるぐらいはいいよね?」
「それはもちろん」
「じゃあ」
僕の身体をバッキバキにしたしたんだから、責任とってよね。
の、つもりで言った『鴉、お弁当作って』は、何でか見事に天ちゃんとハモって、僕は天ちゃんと顔を見合わせて笑った。
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