光 116
そんなに寝言ひどかったのかな。
って思うぐらい、鴉が、鴉だけじゃなくてかーくんときーちゃんも、心配そうな目で僕を見てるから、僕は一体何を言ってたんだろう恥ずかしいって、鴉が持って来てくれたお水をごくごく飲み干した。
飲み終わると同時に横からデカい手が出てきて、コップを持っていった。
そしてそのデカい手が、僕のおでこに触れた。
「頭痛いとかないか?」
「うん。大丈夫」
「気持ち悪いとか」
「ないよ、本当だよ。大丈夫」
「………そうか」
「………うん」
体調が悪いんじゃない。夢だよ。
夢を見ただけ。
前にも見たことある夢。
母さんの夢。
っていうか、母さんの口の夢。
苦しそうだったって鴉に言われたけど、苦しかったっていうか。
………夢だと何でもありだよね。
母さんの口が無限にあるなんていう、ありえないがあり。
冷静に考えるとちょっと気持ち悪い。無限の口。
見渡す限り口。赤い口。
さっきのは、悪夢に分類してもいいのかもしれない。
何も言わずに死んじゃった母さんの口だけが出てくる夢。
夢に意味なんかないよ。
夢だから意味なんか。
でも、同じ夢が2回目。
口は言ってた。何でって。
何も言わずに死んじゃった母さんは、本当は何か言いたかったのかな。
いっぱいいっぱい、たくさんの口になるぐらい、いっぱい言いたいことが、あったのかな。
「………寝れるか?」
じっと僕を見てた鴉が、小さく聞いた。
まだ外は真っ暗だから、まだまだ寝れる時間。
「………うん。起こしちゃってごめんなさい」
謝った僕に気にするなって鴉は言って、そして。
そしてだよ‼︎
本当鴉ってよく分かんない。
無表情だけど無愛想だけど、すんごい心配してくれてるんだなって分かって安眠妨害してごめんなさいって僕は思ってさ‼︎思ったのにさ‼︎だから謝ったのに‼︎だよ‼︎
「俺の布団に来るか?」
って‼︎
すんごい真顔で言うんだよ‼︎
ぴろって自分の掛け布団をめくってだよ⁉︎
「なっ………何言ってんの⁉︎行かないよ‼︎」
「トイレは?連れてってやるぞ?」
「大丈夫だし‼︎大丈夫じゃなくても自分で行けるし‼︎」
鴉は顔も声も無表情すぎて、本気か冗談かの区別がつかない。できない。
本気に受け取って冗談だったらどうするの⁉︎
っていうか。
………鴉はカッコいいんだよ。
カッコいい人が真顔でそんなこと言ったらさ、どきってなるんだって。変な汗が出るんだって。
だから本当、変なこと言わないで欲しい。
くしゃくしゃって、鴉のデカい手が僕の頭を撫でた。
僕は、その手に思った。
反射的に。
ああ、大丈夫だって。
まだ寝られる時間だから、また寝て、そしてまた変な夢を見ても。
鴉が居てくれる。
起こしてくれる。
大丈夫か?って。
で、大丈夫じゃなかったら。………たら。
………。
………。
うん、寝よう。
考えるのを途中でやめて、もぞもぞ掛け布団の中に入ってって、僕は結構あっさり目にまた、眠ることができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます