鴉 92
何て表現をしたらいいのか分からない感情が気持ち悪かった。
今まで別に、天狗と光が話してても何も思わなかったのに。
気持ち悪い感情。
初めて抱く感情。
感情は胸のあたりにあると思う。
気持ち悪いのはその辺り。吐き気とかじゃなくて。
天狗との生活は穏やかだ。
それでも小さい頃にそれなりにあった感情の揺れは、比べれば、今は少ない。
淡々と過ぎる。
光が来たことによって増えた感情の振り幅は、そうだ。いいことだけではない。
知らない感情。
光が出したグラスに冷蔵庫から出したお茶を注ぐ。飲む。
一緒に寝たら、この気持ち悪い感情は消えるのか。
「飲む?」
俺がじっと見てるのを不審に思ったのか、光が振り向いて聞いた。
「………いや。いい。ありがとう」
見たところで何ていう感情かなんて分からない。
あんまり見過ぎても気持ち悪いだろう。
歯でも磨こう。
小さい光が使ったグラスを洗ってて、偉いなって意味を込めて通りすがりに光の頭を撫でた。
歯を磨いてたら光も来た。
並んで歯磨きをした。
先に始めた俺が先に終わって、終わった俺が先にトイレに行って居間に居る天狗におやすみって言った。
まだ早いけど。
何となく今日は。
「今日もぴかるんと寝る?」
「寝る」
「オレも一緒に寝ていいかなぁ」
「………」
「楽しそうだったんだよねぇ、みんなで寝てるの」
「………」
光が使ってる部屋にデカいのふたりと小さいの3人。
小さい、の、小さいが、文字通り小さいけど、それにしたって。あの部屋でそれは。
「ぴかるんが真ん中で川の字ってどう?」
光が真ん中で。
想像した。
気持ち悪い感情が、そこにはあった。
「天狗」
「んー?」
「俺、気持ち悪い」
「え⁉︎」
どうした⁉︎って。
天狗がすごい勢いで俺のところに来た。
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