光 90

 鴉がお風呂まだなのに、僕にもう一回風呂行ってこいって言われて、僕は今日実に3回目のお風呂に入った。






 もう本当に泣きすぎ。干からびちゃうよ。






 さっさと浴びて出てったら、居間で天ちゃんと鴉がくっついててびっくりした。






「え、何してるの?ふたりで………」






 僕が鴉にされるようなことを、そうか、鴉は天ちゃんにされてるんだ。






 いつも僕を小さいの扱いしてる鴉が、天ちゃんに小さいの扱いされてて、笑った。



 そしたら、光も来いって引っ張られて。






 僕は、大きいのふたりに、くっちゃくちゃに、された。











「あの、天ちゃん」

「ん?おお、次はぴかるんかぁ」

「へ?」

「あ、こっちの話。なあに〜?ぴかるん」






 鴉がお風呂に行った。



 さっきまで大暴れで大騒ぎだったかーくんときーちゃんは僕が使わせてもらってる部屋に戻ってった。



 今日仕事が休みな天ちゃんは、ダラダラにソファーに座ってて、言うなら今かなって。






 ダラダラに座ってた天ちゃんが、よいしょって座り直して、僕が座るスペースを開けてくれた。



 だから僕は天ちゃんの隣に座って。






 天ちゃんの肩に、凭れた。






 天ちゃんにこういうことって、初めて、かも。






「うわぁ、ぴかるんがかわいい〜って、ぴかるんはいつもかわいいか」

「今日はぷちぶさなんでしょ」

「あれ?そう来た?」






 ひゃひゃって天ちゃんは笑って、どしたの?って、鴉とは違う、でも鴉みたいに大きくてあったかい手を、僕の頭に乗せてくれた。






「また、来ていい?来たいんだ、僕」

「ん?どこに?」

「ここに。天狗山に。僕がいつか、山をおりても」






 え?って。



 天ちゃんが僕を見た。



 気配でそれを感じた。






 気配でしか分かんないのは、僕より上にある天ちゃんの顔が見えないから。



 僕が天ちゃんを見ないから。見るのがこわいから。






 沈黙。






 そして。からの。






 ぽんぽん。






 手。






「そんなの、いつでもおいで。っていうか、呼んでくれたら、文字通りいつでも、どこにでもいつでも駆けつけるよ」

「………え?」

「だからぴかるん」






 頑張れ。






 天ちゃんの、思いがけないひとことに、じわり。






 涙が浮かんだ。

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