光 88

 もういい加減泣き疲れた。



 泣き尽くした。



 多分、僕の今日までで1番泣いてる。






 布団に潜ってたから暑いし、頭と目は重いし鼻は詰まってし喉がかわいた。






 僕は小さくないって言ってるけど、1日に何回もこんな大泣きしてたら説得力ゼロだよ。なし。






 鴉が居るから恥ずかしい。



 とはいえ、いつまでも布団に潜ってることもできないから、もそもそ出た。






 かーくんときーちゃんは退いてくれて、僕が座ってからまたすりすり。






 ありがとうって撫でてあげたいけど、顔が。






 涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を、自分の手の甲でごしごしした。



 そしたら鴉がすごい顔だなって。



 で、シーツかえてやるから、シーツで拭いとけって。






 え、涙と鼻水を?






 この部屋にはティッシュがない。



 あるのは台所か居間。



 取りに行くとか持って来るって発想がない鴉って………変、だよね?



 さっきは外だったから鴉の服でも仕方ないってなったけど、今は家。






 まあ、すでに色々ついて汚いのか。






 僕が蹲って泣いてたところを見て自分に納得させて、僕は掛け布団のふちらへんで顔を拭いた。






「ごめん」






 鴉がまた言った。






 僕は何て答えていいのか分かんなくて、困った。






 責任って言葉が、僕は悲しかったんだ。



 鴉が僕に色々してくれて優しいのは、単なる責任なの?あったかいって感じたのは僕の勘違いで、そんな温度のないものなの?終わったら終わりなの?






 僕がここに居ることが、終わったらそれで。






 それが悲しかった。



 何だよって。そう、なら。ただの責任なら。






 最初から優しくなんかしないでって。






 でも違った。



 今度は違ったことが嬉しくて、涙が出た。






 そんなの、聞かなくたって、鴉を見てれば分かるのに。






 ごめんなさいは、僕。






 かーくんだってきーちゃんだって、こんなに分かりやすく僕に好きを見せてくれてるのに。






 すりすりしてるふたりを、僕は撫でた。






 小さくて、すごく、すごくあったかい、存在。






 ありがとうの意味を込めて撫で撫でしてたら、僕の頭にまた鴉のデカい手が乗った。






 かーくんときーちゃんには、僕が大きい存在。



 けど鴉には、僕は。






「わわっ」






 急に。



 引っ張られて。鴉に。



 頭に乗っかってた手に。



 で、バランスを崩して。僕は。






 ………僕は。






 そのまま鴉にむぎゅって。



 むぎゅって、鴉に。






 抱き止められた。

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