光 60
僕が僕のことを、何でここに来たかって理由の話した以上を詳しくを天ちゃんと鴉は知ったっぽいなあって、天ちゃんと鴉を見て思った。
態度がよそよそしいとか、腫れ物扱い、ではないんだけど、何となくほんの少し、今までと違う感じの気を使われてるかもって。
ニュースはどこまでを報じているんだろう。
きっと、結構詳しく言ってるんだろうね。
母さんがよく見てたけど、ワイドショーとかってえげつないもんね。
母さんが見てた番組で、やってたりするのかな。
母さんが発見されたときのこととか。
母さんが死んじゃってからの僕が毎日どんなだったのかとか?
どんな風に犯されたのかとか?
僕を知ってる誰かが話してるのかな。顔を出さず。モザイクで。面白おかしく。これは面白い話題だって、しつこく。どこのチャンネルでもさ。
そんな風に思うのは、時々、心配そうに僕を見てる視線のせい。ふたりの。
けど、何かを言ってくるんでもない、視線がね。天ちゃんと鴉の。
違うから。何かを含み始めたから。
だから、まあ、面倒だよねって。ごめんなさいって。ちょっと思った。
それでも、何とか普通に、今まで通りにってしてくれてるのに、ありがとうって思った。
雨が続いていっちゃんが来られなくて、日に日にヘドロが増えてって、しんどいがしんどすぎて起き上がることもできなくなった雨の日。
天ちゃんがいっちゃんを連れて来てくれた。
ひかる。
ぐったりと寝てた部屋。
いっちゃんって本当すごいって、心の奥の底の底の底ぐらいからしみじみ思った。
そしてその日から、いっちゃんは雨の日でも来てくれるようになった。天ちゃんがいっちゃんを迎えに行ってくれてるみたいだった。
いっちゃんが天ちゃんを呼んでくれてるのかもしれない。僕のために。
そこまでをしてもらって、僕には一体、何ができるんだろう。
考えても、分かんなかった。
いっちゃんのお陰で身体も心も楽になっているのに、身体も心も、スッキリとは………ならないんだな。
そんなことがあって、そんなことを感じる雨の日と曇りの日の数日間経て、久しぶりに晴れた朝。
天ちゃんが言った。
「よし、今日はみんなで遠足に行こうっ」
毎度のことながら、天ちゃんが何を言ってるのか僕には分かんなかった。
分かんないんだけど、とにかく本気っていうのは分かった。
僕のためかな。
僕を楽しませようとしてくれてるのかな。
最後までどこに行こうとしてるのかは分かんなかったけど、魚釣りをしてバーベキュー的なことをするっていうのは、分かった。
バーベキューか。
僕、そういえばそういうの、やったことないや。
「鴉〜、やっぱり三角にならない〜」
「………」
「そこは何か言ってよ。傷つくじゃん」
「下手でも俺が食ってやる」
「………うん」
鴉と一緒におにぎりを作った。
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