光 57

 いっちゃんが側に居てくれないとめちゃくちゃしんどい。






 ドロドロのヘドロがすごいことになってて、だからなんだけど、すごいのを見ちゃった精神的ショックとか、あの見た目のグロさとかそんなのも多分あって、僕は鏡を見たあと部屋にこもって布団に潜って、ずっと雨の音を聞いてた。






 って、僕がなるのが分かって、いっちゃんはいつも来てくれてるのかな。



 だとしたら、何か。






 ごめんねって思って、そしたらもっと身体がずんって重くなって、その日は本当に最悪だった。






 きーちゃんがずっと側に居てくれた。






 真っ白なきーちゃんがぴったり僕の横にくっついてた。






 ふわふわな毛を撫でて、きーちゃん肉球触らせてって、ぷにぷにで気持ちいいきーちゃんぼ肉球をずっと触ってた。






 みんなで大きい猫又のまーちゃんに乗って、棘岩に行きたい。



 棘岩のとげとげを、いっちゃんと撫でたい。



 大きい木の下で鴉が作ってくれるお弁当やおやつが食べたい。



 きーちゃんの小さい肉球とまーちゃんの大きい肉球を順番に触りたい。






 こんな風にじめじめした空気の中で、じめじめなんか。






 してたくない。






 してたくないよ。したくない。イヤだよ。






 でもどうしたらいいの?僕はどうすべきなの?






 いつまでもここに居ちゃいけないとは思うよ。思ってるし分かってるよ。天ちゃんや鴉に迷惑だし、何の解決にもならない。逃げてるだけ。



 でも帰るとどうなるか。帰ったら。







 帰っても。






 考えても、分かんない。



 どうしたいかって何。



 どうしたいって今はここに居たい。それしか。






 ぷにぷにの肉球をぷにぷにして、そのぷにぷににおでこをくっつけてぐるぐる思考としんどいのに撃沈。目を閉じた。






 きゅうって、きーちゃんが小さく鳴いた。










 朝、僕は早くに目が覚めた。



 ホストをやってる天ちゃんが、仕事から帰ってきてる気配がしてた。






 だから僕は起きて。天ちゃんって。






「おはよう、ぴかるん。早起き過ぎない?どしたの?」






 お茶を飲むためか、天ちゃんはキラッキラチャラッチャラな着崩したスーツのまま、お湯を沸かしてた。






「おはよう、天ちゃん」






 挨拶、して。



 ちゃんと。



 これもこの家のルールだから。






 そして。






「天ちゃん僕、もうしばらくこの家に居たいです」






 それ以外どうしたいかが分かんないから。



 それ以外が思いつくまで。



 どうしたら思いつくのか、それも分かんないけど。






「だから、もうしばらくこの家に僕を置いてください」






 天ちゃんに僕は、頭を下げた。

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