光 50
きこちゃんの足は治った。ひとつ目ちゃんが治してくれた。
ひとつ目ちゃんにありがとうって。
きこちゃんに良かったねって。
きこちゃんを下におろしてふたりを撫で撫でしてたら、おい光ってびっくりするぐらい低い声で鴉に呼ばれた。
な、何?って聞くヒマも隙間もなく僕は鴉に。
………怒られた。
靴下を無理矢理脱がされて、またちょっと切れて血が出てる足の裏を怒られて、結局また天ちゃんの家で鴉に足を洗われてひとつ目ちゃんに治してもらった。
だから鴉の靴が大きすぎて脱げちゃったのって。
言ってみたけど、無駄だった。怒られた。
怒られたんだよ、僕。
怒られるなんて久しぶりだった。
何ですぐに呼ばなかったとか、裸足で走ったらケガするのはお前が一番わかってるだろとか。
そんなこと言われたってそれどころじゃないよ。なかったよ。
よりも。そういう説明よりも。
ごめんなさい。だった。口から出たのは。
ごめんなさいと。ありがとう。
本気で心配してくれてるんだよ。くれてたんだよ。鴉は。だから怒るんだ。怒ってる。
そんな人が、僕にはもう居なかった。居ないから。居なくなった。
ごめんなさい。ありがとう。
言った僕に鴉は。
ぐしゃぐしゃって、頭を撫でられた。
「うわぁ、きこちゃんって真っ白だったんだ‼︎」
天ちゃんの家のお風呂。
もののけってお風呂に入れてもいいのかな?ってちょっと気になったけど、きこちゃんがあまりにも汚れてるからキレイにしてあげたくて、天ちゃんと鴉に聞いてお風呂を借りた。
何で洗えばいいのかな?シャンプー?ってちょっと悩んで僕は石鹸を手に取った。
何となく。
その方がきこちゃんにはいいかなって。
犬とか動物を飼ったことがなくて、どう洗っていいのか 分かんない。
ただキレイにしてあげたい。
おっかなびっくりの僕に、おっかなびっくりなきこちゃん。
ごめんねって言いながら、洗った。1回じゃ全然キレイにならない………どころか泡もたたなくて、もう1回。
泡を流したら出てきたきこちゃんの真っ白な毛。
洗ってるときにびっくりした3本に分かれてる尻尾。
「きこちゃんって本当に『もののけ』なんだねぇ。そして美人さんなんだねぇ」
そう言いながらシャワーで流してたら、きゅうってかわいい鳴き声と、カアアッてカラスのちょっと文句っぽい鳴き声。
「カラスはカッコいいよ」
よしよし。
かわいいなあって、僕はふたりを撫でた。
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