鴉 48

 どういう仕組みなのかはまったく分からないけど、天狗は呼ばないと呼ばれたそこまで一気に行くことはできない。




 だから、上空で旋回しながら鳴くカラスを追うように、天狗は風を起こして移動した。






 1羽、2羽、3羽、4羽………。まだ続く。






 風が吹いて景色が変わる。すぐにまた風が吹いて景色が変わる。一瞬。瞬きで変わるみたいな。






 光。何かあったら天狗を呼べって言ったのに何で呼ばない。



 天狗がさっき言ってたように、緊急事態じゃないから?






 ………光のところに着いて緊急事態だったら怒る。怒るからな💢光💢






「あれか」






 俺には見えなかった。上空。



 風が吹く音と共に、景色は一瞬で、変わる。



 だから見えない。見てるヒマもない。その一瞬で、天狗はボスカラスを見つけたらしくて。






 ざああああああっ………






 音。風の。そして。






「きこちゃんダメっ‼︎」






 景色が変わったその目の前。



 光がダッシュして、あの汚い謎のもののけ、『きこ』に飛びついて押さえるのが、光の元に着いた瞬間飛び込んできた。






 光は『きこ』と一緒に飛びついた勢いで花の上に転がった。そのままぎゅって抱きついてる。






「猫又ちゃんもダメっ」






 何が。






 一体何が起こっているのか。






 は?とか、え?とか。



 俺と天狗はそんな感じ。






「どしたの?ぴかるん」

「天ちゃん⁉︎僕天ちゃん呼んでないよ⁉︎何でいるの⁉︎」

「いやぁ、カラスに呼ばれて………って、何か修羅場?修羅場ババ?」






 天狗って、ちゃんとしてるときはすんげぇちゃんとしてるんだけどなあ。



 何だ、この状況で『修羅場ババ』って。しかも心なしか嬉しそうっていうか楽しそうなのは何でだ。






 にゃあああああっ






 そこに聞こえてきたのは光に怒られて?どこか不服そうな猫又の返事のような鳴き声と。






 カアアアアアッ………






 天狗と俺に気づいて猛突進してくるカラスの。






 だからその勢いな。危ないって。






 俺は短く指笛を吹いてほらって腕を出して、カラスを俺の腕にとまらせた。






 で?






 何がどうしてこうなってる?



 っていうか大丈夫なのか?もののけ相手にそんな。






「ねぇ、きこちゃん。足、ケガしてるでしょ」






 威嚇の声を漏らす『きこ』に、光がそう話しかけてた。

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