光 47
「すっぱーーーーーー‼︎」
そよそよ風に吹かれながら、ちょっと泣きながら、おにぎりをぱくってかじって、思わず僕は叫んだ。
梅干し。だからすっぱい。だけどすっぱい。すっぱすぎる。
何で⁉︎っておにぎりのかじったところを見たら、梅干しの量がすごかった。
これはわざと?それとも鴉的にはこれが普通なのか。
鴉がちょっと変わってるだけに分かんない。
梅干しは嫌いじゃないし食べられるし食べるけど。
ぱく。
「すっぱーーーーーー‼︎」
すっぱすぎて、色々考えてたのがどこかに飛んでった。
包みにはもうひとつ容器が入ってて、それにはりんごが入ってた。
りんごは………うさぎになってた。
何なの、もう。
何だって言うんだよ。僕はそこまで小さくない。
でも。
ありがとう。
鴉にありがとうって思った。帰ったら言おうって思った。梅干しは、今度は減らしてって。
梅干し。
………あれが、あのぎっしり梅干しが鴉的に普通だったら。
鴉の味覚って、どうかしてるよ。
おかしいなあ。ご飯はいつも美味しいのに。
僕がぎゃあぎゃあ騒いでたからか、カラスがばさばさ飛んできて、僕のすぐ横にとまった。
僕を見上げて首を傾げてる。
「大丈夫。梅干しがすっぱかっただけ」
よしよしって小さな頭を撫でたら、通じたのかな?カラスはクワって小さく鳴いた。
それからうさぎのりんごも全部食べて、ごちそうさまでしたって僕は手を合わせた。
ありがとうって、いっぱい思った。
食べながらも思ったけど、食べてからも。
命を食べた。命をもらった。
天ちゃんの言葉でそう思ったら、ありがとうって思うしかできなかった。
僕はこんな風に毎日、色んな命を食べて生きていたんだ。
それに何も思うことなく、それが当然って思って食べてたんだ。
だからごめんなさい、とも。
全然、適当に食べてて、いただきますもごちそうさまも、ただ言うだけで、何も考えず。
クワっ
カラスの小さい鳴き声に目を開けた。
カラスは僕を見上げて首を傾げてた。
心配、してくれてる?僕がごちそうさまって言ってから動かないから。
よしよしって、また小さな頭を撫でた。
「あれ?」
お弁当箱を包もうと思って、大きい風呂敷を広げたら、そこに。
おせんべいとラップに包まれた何かがあるのを見つけた。
ラップに包まれてたのは、アメだった。
ケガした足を洗ったときに食べたアメ。もらったアメ。
え、これって。
………鴉。
これ、は、おやつ、だ。
おやつにって。でもこれしかなかった?
お弁当、水筒、おやつ。
本当に遠足じゃん。
何でそこまでしてくれるのか、鴉が。
分かんない。僕が小さいから?そうなのかも。心配してくれてる?このカラスのように。
ありがとう。
鼻の奥が、つんってした。
死にに来たんだよ。
僕はここに。分かるよね?もう伝わってるよね。
でも。
でも。
どうしたらいいのか、そんなの分かんない。
帰ったって仕方ないって思う。死なないってことはまた戻るんだよ、あの日々に。戻ったって。
そして僕は、刺さってる矢で。あのドロドロで。
とりあえず、きこちゃんを探そう。
おせんべいをバリバリ食べて、アメをひとつ口に入れて、よいしょって立ってひとつ目ちゃんと猫又ちゃんを探した。
そしたら。
そしたら。そのとき。
何かがすごい勢いで動いてるのが。
カアアアアアッ………
見えた。
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