光 43
「光に『うち』のルールを教える」
「ルール?」
「そう。ルール。『うち』に居るのなら光にも守ってもらう」
ルール。
『うち』の。
僕が『うち』に居るのなら。
天ちゃんが言ったその3つの言葉だけで、僕の頭と心の中が一気にすごいことになった。ううん、身体も。
僕。
居ても、いいの?天ちゃんの家に。そこを『うち』と呼んでもいいの?
心臓がどくどくどきどきして、手汗が一気に出て、僕は、持っていたお弁当と水筒の包みをぎゅって抱えた。
僕は。
僕は、母さんが死んじゃって、父さんが帰って来なくなって、学校で先輩たちに襲われて、先生にそれをスルーされた。
ショックの大きさは、その順番。
母さんが1番、父さんが2番、襲われたのが3番で先生のスルーが4番。
心がどんどん凍っていくのが分かった。
僕なんて何の価値もない。存在していても意味がない。誰も僕のことなんて。僕なんかのことんなんて。
『うち』。ルール。
渡された鍵のようだった。それが。
いいよ、の、鍵。
いいよ。いてもいいよ。ここに。
『うち』に。
僕は、天ちゃんの言葉を、全力で聞いた。
天ちゃんが教えてくれたルールは、簡単なものだった。
鴉が作ってくれたお弁当を食べるときに、しっかりと手を合わせていただきますって。
天ちゃんと鴉の食べる前がすぐに思い出された。あれだ。あのことを言ってる。
話は続いた。
何故、を、聞いて。『そう』する意味を、理由を聞いて。
僕は。
びっくり以外の言葉が出なかった。出てこなかった。
知らなかった。
『いただきます』は、ただ言えばいいだけだと思ってた。
それは違った。その認識は。もっと奥深いものだった。
胸の奥。奥の方が。
『いいよ。居てもいい』
聞いて初めて僕は。
教えてもらったそれを、絶対やるって。
思った。
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