光 41

 一緒に行ってきたら?って、廊下からひとつ目ちゃんと猫又ちゃんを見てたら天ちゃんが言って、へ?ってなった。




 一緒に行ってきたらって何?って。






 そしたら、多分今からひとつ目ちゃんは猫又ちゃんと『ご飯』だからって。






 また。そうか、猫又ちゃんに乗って行くんだ。






 普通にはありえない、リアル猫バス。ひとつ目ちゃんのお友だち。



 触ってみたいって思ってて、ひとつ目ちゃんが優しいよって言ってて。






「気狐のことも、気になるんでしょ?」

「………」






 天ちゃんは、普段チャラチャラにチャラいのに、全然チャラくないときがある。



 こわいって思うときがあって、今は。






 うわって。






「ぴかるんは、どうしたいの?」






 うわって、なるよ。






 いつもの天ちゃんなのに、いつもの天ちゃんじゃない顔。



 僕をじっと見て、笑ってるのに笑ってない気がする。






 僕に『あの鏡』を見せた天ちゃん。………天狗。






 そういえば、ひとつ目ちゃんと居たからか、息苦しいとか身体が重いとか、ない。






 あれ?でも、いつから?






 足が痛いのであんまりそこまで気にできてなかったけど、足が痛いだけであんまりだったような。






 気のせい、かな?






 どうしたいの?って、天ちゃん………天狗は言ってるけど、僕には行けって聞こえる。






 それこそ気のせい?






 行きたいなら、きこちゃんが気になるなら『行け』って。圧、みたいな。






「………行きたい」

「行きたい?」

「行きたい。猫又ちゃんに触りたい。僕も乗ってみたい。ひとつ目ちゃんの友だちなら、僕も仲良くなりたい」

「うん、いいね。それから?」






 それから。






 きこちゃん。






 いきなりここに現れて、ひとつ目ちゃんを誘拐した謎の動物。天ちゃんやひとつ目ちゃんたちと同じ、不思議な力を持つもののけ。






 気になるのは、自分から僕たちの前に現れたのに、僕たちのことをこわがってたってこと。






 こわいんだよね?あんなに僕たちに威嚇して、近づくなって。



 こわいなら僕たちに近づかなければいいのに、自分から近づいてきた。ひとつ目ちゃんを誘拐した。



 天ちゃん曰く、『そんな子じゃない』きこちゃんが。






「ひとつ目ちゃーん、猫又ちゃーん、ぴかるんも連れてってあげて〜」






 僕が答えるより先に、天ちゃんが外のふたりに大きな声で言った。






 ………鴉がいいって言うのかな?






 鴉の、僕への過保護ぶりはすごい。






 何でかはよく分かんない。『小さい』から?



 すごく心配してくれて、焼きすぎなぐらい僕のお世話を焼いてくれる鴉が、果たして僕とひとつ目ちゃんと猫又ちゃんのお出かけを許してくれるの?ってすごい普通に思った。ダメとか俺も行くとか言いそうだなって。






 でも、天ちゃんが鴉に行っていいか聞くときのアドバイスをくれて、その通りにしたら本当にいいって言ってくれた。



 しかもおにぎりを作ってくれるって。






 おにぎり。






 鴉が作ってくれるおにぎりを持って、ひとつ目ちゃんと猫又ちゃんの猫バスに乗って山。






 ちょっと遠足みたいじゃない?なんて、僕はちょっと思った。

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