光 40

「ひかる、あし、なんで?」




 僕の横にぴとってくっついてたひとつ目ちゃんが大きな目で僕を見上げた。





 足、何でって。






「え」






 聞かれても。






 困る。困っちゃうよ。






 それはひとつ目ちゃんを探しに行ったから。



 裸足で外に出てそのまま行っちゃったから。






 僕が勝手にやったことだからひとつ目ちゃんのせいじゃない。でも。






 ………でも。






 僕が答えないからか、ひとつ目ちゃんは鴉を見上げた。






 お願いだから黙っててよ‼︎って目で訴えたつもりなのに、鴉は全然気づきもしないで。






「靴も履かずにお前を探しに行ったんだよ」






 あっさり。






「ちょっと鴉‼︎」






 やめてよ。言わなくていいって、そんなこと。言わないでよ。言って欲しくない。






「違うよひとつ目ちゃん、これはっ」






 この足は、僕がひとつ目ちゃんを探しに行ったから。



 裸足で外に出てそのまま行っちゃったから。



 でも、探したかったけど結局僕は探せなかった。



 探せなかった上にケガして、探せなかったひとつ目ちゃんに治してもらった。






 なんて。



 そんなの。






 僕、ただのかっこ悪いやつじゃん。



 何もできなかった上に鴉やひとつ目ちゃんの手をわずらわせただけのやつじゃん。



 しかも足を洗ってもらうのにこれだけぎゃあぎゃあ騒いで、それも見られて。






 めちゃくちゃかっこ悪いじゃん。



 かっこつけたいとかじゃないけど、かっこ悪いじゃん。






 余計なことを言う鴉に、もうっ‼︎てなって、ひとつ目ちゃん、聞かなくていいよ‼︎ってひとつ目ちゃんの耳塞いじゃおうかなって思ってたら、さらにひとつ目ちゃんが。






「さがしに?」

「そう。ひとつ目を探してた。一生懸命」

「鴉‼︎」

「いっしょうけんめい」






 鴉のばかっ。



 ばかばかばかっ。






 ひとつ目ちゃんが小さく小さく『ありがと』って言ってくれてなかったら、僕は手のぐーを振り回して鴉をぽかぽか殴るところだった。






 ありがとって。



 ありがと、なんて。






 全部無駄だった僕の行動が、ひとつ目ちゃんの一言で全部、報われた気がした。











 天ちゃんに服を渡されて、鴉に洗濯するから着替えろって言われて着替えて、ひとつ目ちゃんの着物が破れてるのをごめんねって言ってた。



 どうしよう、他に着るのある?って聞いたらないって。






 そういえばひとつ目ちゃんってお風呂とかどうしてるんだろう。



 必要ないのかな?着替えも?






 人間じゃないのなら、そうなのかも。






 天ちゃんは人間に紛れて働いてるから、また別なんだろうか。






 お茶飲みなよって天ちゃんに言われて、隣にぴとってくっついてるひとつ目ちゃんを撫で撫でしながら居間のソファーで飲んでるときだった。






「ひとつ目ちゃーん。来て来て〜、早く来て〜、今すぐ来て〜。猫又ちゃんが来てるよ〜」






 オレもうちょい寝る〜って居間から出てった天ちゃんが、廊下からひとつ目ちゃんを呼んだ。






 猫又ちゃん。






 ひとつ目ちゃんのお友だちの。リアル猫バス。



 ひとつ目ちゃんがきこちゃんにさらわれて、多分ダッシュで探しに行ってた。






 ひとつ目ちゃんはぴょんってソファーから飛び降りて、たたたたって走って行った。



 僕も猫又ちゃん見たいって、ひとつ目ちゃんを追いかけた。






「大丈夫だよ、猫又ちゃーん‼︎ひとつ目ちゃん無事だからー‼︎」






 追いかけて廊下に出たら、開けた窓の向こうに向かって天ちゃんが叫んでた。






 にゃああああああっ






 返事をする猫又ちゃんがかわいかった。






 心配、してたんだよね、きっと。



 いっぱい探したのかな。探したよね、きっと。



 でも見つけられなくて、ここに来たら居るかもって思って来たのかも。



 それか天ちゃんがカラス経由で教えたとか。






 友だち、か。






 いいなあって、僕は廊下からふたりを見てた。

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