鴉 6
イヤな視線を感じてはって見たら、天狗が天狗のくせに和じゃなく洋なその顔ににやあああああってイヤな笑みを浮かべて俺を見てて、思わず反射的に光の頭に乗せてた手をばって退けた。
そのまま台所に逃げた。
そしたら俺の肩に乗ってたカラスが、ばさばさって。
「うわああっ」
驚く光の声に振り向けば、カラスは何がそんなに気に入ったのか、光の肩にとまって光にすりすりしてた。
「こわがらなくて大丈夫だよ〜、ぴかるん。この子は天狗山カラスのボスでね、すっごい頭のいい子だから。ぴかるんに一目惚れしたみたいだね。離れない」
「ひっ…一目惚れ⁉︎」
「そう、一目惚れ。あっちの鴉もぴかるんかわいいから気に入ったみたいだし、とりあえずご飯食べよ、ご飯」
カラスは光の何がそんなに気に入ったんだろうなって、光ってパンか?白米か?って悩みつつ考えてたら、聞こえてきた。
ふたりの話し声とカラスのばさばさって羽の音。
あっちの鴉って、俺?
俺が気に入った?光を?
俺?
「………」
いや、別に。
顔は確かに、昔テレビで見てた人間たちより整ってる気はするけど、天狗ほどじゃないし、俺はただ、俺よりちっこいのに大変そうだなって。
俺は天狗曰く25才。の、俺より、着てるのが学校の制服だろうから光の方が年下。
色々。
俺みたいに要らねって捨てられたんじゃなくて、自分からこんな山に来てて、しかも矢つき。
あんなちっこいのに。
「僕ご飯いいですからっ」
「ダーメダーメ、もうぴかるんの分まで作ったから」
「でもっ」
「勝手に山に入って悪いと思うなら、食べってってよ〜?」
「………っ」
最後の一言で光が撃沈されたのが分かった。
はいはい、ぴかるんはここーって、天狗に無理矢理座らされた。
俺の横かよ。
光が座るのを待ってか、光の肩に乗ってたカラスが、ぴょんってテーブル。光の前におりた。
そして。
ぶーって、天狗がカラスを見て笑った。
笑われたのが気に食わなかったのか、カラスがばさばさって飛んで天狗をつつく。
でもまたすぐに光の前に行って始める。やった。
求愛ダンス、を。
本当に一目惚れだな、カラス。
一生懸命光に求愛してるカラスを、光はじっと見てて、それからふわんって。
ふわんって、俺よりだいぶちっこい手で、撫でた。
「………カラスって、あっついんだね」
光は無表情に、つぶやいた。
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