光 4
あのまま、外で倒れたままだったら、僕は今頃どうなってたんだろう。
今は5月だから凍死はしないと思う。
でも寒いかもしれない。山だし。
布団に潜ってそんなことを考えてた。
横を向いて丸まってる。
背中が少し重いのは、カラスが僕にぴったりとくっついて寝てるから。
ちょっとだけ頭を動かして見たら、カラスは首を縮めて後ろに向けてた頭をくるってこっちに向けた。
バチって目が合う。
このカラスは一体何なんだろう。
カラスは頭がいいって聞いたことあるけど、こんな風に人に懐くことなんかあるの?
懐かれてるよね?僕。違う?
いきなりくわってくちばしで突かれたらイヤだなって、僕はまた布団に潜った。潜りながら思った。
朝になったらこっそり出て行こう。
そして。
そして。
………そして。
つんつん。
髪の毛が微妙に引っ張られる感じがして、何だろうって思った。
つんつん。
つんつんつんつん。
え、ちょっと痛いよって思って、つんつんしてる何かを払った。
空振り。
手は何にも当たらず、またされる。
つんつん。
つんつんつんつん。
「ちょっと痛いってば」
何もうって、僕は目を開けた。
目を開けて。
つんつん。
つんつんつんつん。
視界が黒。
で、わわってなってがばって起きた。
『起きた』。
勢いよく起きたから、ズキってお尻とかお腹とか痛くて、そこから記憶が。
昨日の悪夢のような記憶が一気に押し寄せた。
そういえばここ。
僕、朝になったらここ。
布団から身体半分が出たら寒くてブルってなった。
黒いのが動く気配がして、見たらそこに。
カラス。
昨夜からずっと僕の側に居るカラスが、まだそこにいた。
カァッ………
僕を見上げて小さく鳴いて、ばさばさって僕の足がある布団の上に乗った。
ちょっとこわくてわわってなったけど。
首を傾げて、僕を見てる。
そしてばさばさ。ばさばさ。羽を振る。
何をしてるんだろう。
何かをすっごい訴えられてる気がする。
って、そんなことより。
窓の外が明るい。
昨夜は開いてたはずの襖が閉まってた。
昨夜はついてたはずの電気が消えていた。
こんな状況で眠れるわけないじゃんって思ってたはずのに、いつの間にか寝ててしかも朝。
何時?ってキョロキョロしてみたけど、部屋には何もなかった。
僕はごめんねってカラスに言って立ち上がって、急いで立ち上がりすぎてお尻含めてあちこち痛ってなって、また昨日を思い出して涙が滲んだ。
死ねよ。お前ら。
そう思う僕はきっと死んだら地獄に落ちるんだ。
ううん、そもそも自分で死ぬんだから最初から地獄だ。
だったらいくらでも言ってやる。
死ねよ。死ねばいい。
僕をおかしたヤツ全員。
ぎゅって拳を握って、僕はそっと襖を開けた。
カラスの視線が気になって振り向いた。
カラスはじっと僕を見ていた。
このカラスは、大丈夫な気がする。
多分僕に何かしようとは。
行こう。
そっと出て行こう。
助けてもらったのに何も言わずに行くのはごめんなさいって思うけど。
僕は助けてなんて欲しくなかった。
部屋から出て、廊下。
玄関はどっちだろう。
出たとこでまたキョロキョロしたときだった。
カアアアアアアッ………
カアアアアアアッ………
「ちょっと‼︎」
カラスが大きな声で鳴いて。
僕は。
「あ、ぴっかりん、おっはよ〜」
誰。
僕は金髪で金ピカアクセサリージャラジャラのお兄さんに、見つかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます