鴉 2
「カラス」
呼びながら、部屋に入った。
天狗の家は『天狗』らしく和風な古民家。
天狗がいつから住んでいて何年住んでるのか分からないけど、見た感は相当古い。
けどそれは見た感。見た感じ、で。
家の中はばりばりの最新。
俺が山にこもりっきりなのに、知識として色々あるのは、この最新のおかげ。
テレビもパソコンもここにはあって、学校には行ったことないけど勉強もしたから。
全部それは、天狗がしてくれたから。
『拾っちゃったから、仕方ないよねぇ』
天狗ひとりならしなくていいこと。
でも俺が居ることによって、しなくちゃいけないわけじゃないのにしてくれることに、天狗は言った。拾っちゃったから。俺を。
じゃあ、捨てればいいのに。捨てればいいだろ。
拾ったって。要らないなら。
なんて、多分思春期とか反抗期なときに言ったら、てめぇ今なんつった?って、普段の天狗からは想像もできないぐらいの背筋が凍るような声で言われて、死ぬんじゃないか?って本気で思うぐらいの射る目で睨まれたことがある。
だからそれ以来言っていない。
思ってもいない。思うこともダメなんだ。
色んなことを込みで分かって納得して、天狗は俺を拾ったから。拾ったんだ。拾っちゃったから。
うん。………拾った。
………拾っちまったんだよなあ。
部屋。
使ってない和室に敷いた布団。
あれ、この家に布団なんかあったの?って。
天狗だろうな。拾うの反対したくせに。用意したんだ。俺にはできないし、どうやってなのかも分からない技で。方法で。
部屋。布団に潜って丸くなってるだろう布団の形。これが拾ったってやつ。
その上に乗るカラス。
カラスって、拾った人間に懐く習性でもあるのか?
「カラス、退いてやれ。ビビってる」
「だっ………誰⁉︎ここどこ⁉︎」
俺の声に、丸まってた布団からバッて出てきた、カラスが拾ったも同然のソイツは。
女みたいにキレイな顔をしていた。
俺は実際天狗しか知らないけど、あとは昔ちょいちょいテレビで観てたドラマとかしか知らないけど、この今布団から出てきたやつが、相当整ってる顔ってことは、すごい分かる、かも。
「ここは天狗山の天狗の家で、俺は鴉」
「え………天狗?カラス?」
黒い髪。
黒い目。
白い肌。
髪や目が濡れたみたいに見えるのは、きっとその黒が濃い黒だから。
「名前は?」
「………ひかる。
影と光。
名前に両方を持つそいつとの、それが最初、だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます