第9話 エピローグ
私は一か八かの勝負に出る事をにした。秘密を打ち明けた上で、心も身体も、自分の全てを使って彼をつなぎとめる。
十年ぶりの彼との一夜は、数えきれないくらい繰り返した私の妄想をはるかに上回るもので、私は彼との行為を思う存分堪能した。
でも、それはそれ、本当の勝負はここからだ。
私は奇襲作戦を開始した。
彼に別れを告げ、振り返ることなく駅に向かって歩いた。
駅の改札へと続くエスカレーターに乗る前に彼が私を呼び止めてくれれば、「我奇襲に成功せり」だ。
彼が声をかけてくれなかったら、すかさず次の作戦に移らねばならない。
エスカレーターから取って返して階段を駆け下り、「私たち、もうこれで終わりなの」と叫んで彼を振り向かせ、彼がひるんだらすかさずそのまま抱きつく。
でも、もしここまでやって失敗したらダメージは甚大だ。女としてもう立ち直れないと思う。
どうか、彼が呼び止めてくれますように。
「お願い! 仏様、イエス様、八百万の日本の神様」
私は思いつく限りの神様を総動員し、胸が痛くなるほど祈りながら、前だけを見て歩いていた。
彼女が嘘をついていた 廣丸 豪 @rascalgo5
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