第6話 真夏のから騒ぎ

 大学一年の夏、僕は高校時代の友人の御堂、小幡と三人で一泊二日の伊豆旅行に出かけた。

 宿は今井浜から十分ほど坂を上った丘の上のペンションだった。こういう時になるとやたらとフットワークの軽い御堂が、早速同じ宿に泊まっていた女性三人組と約束を取り付けてきた。


 その夜、女性三人が僕たちの部屋に訪ねてきた。

 乾杯の後、一番の美人が「猿じいです」と名のった。続いて、小柄な子が「猫娘」、ややぽっちゃり目の子が「牛姫」と名のり、どうやら僕たちごときに、個人情報を公開する気はさらさらないようだ。


 さらに猿じいが、ルックスに似合わぬ発言で我々の度肝を抜いた。

「この子はね、イクときに『もおー』っていうの。だから牛姫。猫娘は自分のお股をなめられるくらい身体が柔らかいから、どんな体位もOKよ」

 すかさず猫姫がやり返す。

「猿じいはね、オナニーしはじめると止まらなくなるの。だから猿じいなんだよ」

 

 女性陣の下ネタに我々は完全に主導権を奪われたが、宴は大いに盛り上がった。。

 六人の中で性体験がないのが僕だけとわかると、早速猿じいが名乗りを上げた。

「よし、お姉さんに任せなさい」

 あっさりと僕の童貞卒業に当確ランプがつき、御堂が僕に向かって親指を立てた。


 三時間ほど経った頃には、ベッドに腰かけた一八三センチの御堂の膝の上に、小柄な猫娘が手乗りの小動物のように跨り、いい雰囲気になっていた。

 「童貞くん、私たちも部屋へ行こうか」と猿じいから声がかかった。

 ところが小幡が見当たらない。三人で捜索すると、彼はトイレにいた。便器の中の大量のゲロの匂いがツンと鼻を衝く。

 僕は小幡を担ぎ、エキストラベッドに寝かせた。おそらく朝まで目を覚まさないだろう。 

 すぐ横のベッドでは、既に半裸の御堂と猫娘が、おかまいなしに二人の世界に入っていた。


 僕、猿じい、牛姫の三人は女性の部屋へ移動した。

  部屋に入るなり、猿じいはストリップ・ショーを始めた。

「豪くん、こっちを見て」

 ブラのホックを外し、左手でその美乳を隠しながらベッドに放り投げると、僕に命令をした。

「豪くんも一緒に脱いで」


 後に引けなくなった僕は猿じいと同時に最後の一枚を足から抜きとった。全裸になった彼女は勢いよく僕に抱きつき、僕をベッドに押し倒すと、馬乗りになって股間をこすりつけてきた。生まれて初めてのナマの女性の下半身の感触に、僕の息子はたちまち鎌首をもたげた。 

 

 猿じいはバッグからコンドームを取り出しすと慣れた手つきで僕に装着し、そのまま自分の腰を沈めた。僕のものを収めた彼女が激しく腰を使うと、僕はたまらずに暴発してしまった。我ながら実にあっけない、感慨も何もない童貞喪失だった。

 猿じいは、これまた慣れた手つきでコンド―ムの口を縛ってゴミ箱に投げ、硬度を失いかけた僕のものを口に含んだ。

 熟練の舌技に元気を取り戻した僕に再びコンドームを装着すると、猿じいは牛姫とタッチをかわした。「やったぜ!」のハイタッチではない、選手交代のタッチだ。

 

 いつの間にか全裸になっていた牛姫が、猿じいと同じ体位で僕を攻めた。

 一度放出して精神的にも肉体的にも余裕があった僕は、頃合いを見て反撃を試みた。僕の上で揺れる牛姫の、ほくろのある胸を揉み上げ、彼女がひるんだところで体勢を入れ替えた。

 彼女の足を大きく開きそのまま腰を突きいれる。僕のものがうまい具合に一回でぬるっと彼女の中に入ると、彼女はかわいらしい喘ぎ声を発した。

 最初は全く噛み合わなかった二人の律動が徐々にシンクロし、それにつれて彼女の声は大きくなっていった。

 さらに腰を使うと、それは獣じみた唸り声に変わっていった。

 そういえば、この子はイクときに「もおー」と鳴くんだったよな。猿じいの言葉を真に受けた僕は、彼女を鳴かせるべく、これでもかとスパートをかけた。

 ようやく訪れたその瞬間に、彼女は鳴かなかった。その代わりに、僕の腰に回した両足を信じられない力で締め付けてきた。

 ぎりぎりと五臓六腑に加わる圧力に、僕の呼吸は止まり、頭の中が真っ白になった。太ももにギブアップのタップをしてみたが、格闘技に疎いのか、そんな余裕がないのか、とにかく彼女は力を緩めてくれなかった。


 時間にして一分ほどだったろうか。強烈なボディシザーズからようやく解放され、涙目で喘いでいる僕に、猿じいが寄ってきた。

「すごいじゃない、イカせちゃうなんて。私、思わずオナっちゃった」

「もおーなんて、言わないじゃないですか」

 僕の抗議にも馬耳東風の彼女が耳元でささやいた。

「ねぇ、私も、い・か・せ・て」


 牛姫の「もおー」は嘘だったが、猿じいの「やり始めると止まらない」は本当だった。身体を張って彼女の際限のない要求に応え続けた僕は、ようやく「合格」をもらうと、泥のような眠りに落ちた。


 

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