第1話 出会い
中学、高校、大学とバレーボール部だった僕は、アラサーの今になっても根っからのスポーツ好きで、気の合う友達とバスケットボールチームを作っていた。
スポーツの秋の到来を感じさせる十月の週末、僕らは都心から電車で三十分ほどの駅にある市民体育館で、いつものように草バスケットボールに興じていた。
二時間の練習を終えると、入れ替わりに女性七名のグループがバレーボールの練習を始めた。僕たちのバスケ同様、あまりレベルは高くない。
急にバレーボールがやりたくなった僕は、思わず彼女らに声をかけてしまった。
「あのー、バレーのコーチ、要りませんか?」
大学のバレー部を引退して七年ほどになるが、そこは元体育会だ。的確なアドバイスは大いに感謝され、技術を評価されもして、僕は大変気持ちよく約二時間の臨時コーチを終えた。
着替えを済ませると、このチームの世話役と思しき二十代半ばの女性が声をかけてきた。
「今日はどうもありがとうございました。私、山上美和と言います。小学校の先生をしています」
「あ、僕、廣丸豪、会社員です」
「もしよかったらこれからも時々コーチをお願いできませんか」
僕は申し出を快諾し、彼女と連絡先を交換した。
駅の改札で再び山上美和さんに呼び止められた。
「あの、もしよかったら、一緒に行っていただきたいところがあるのですが」
「二人で、ですか」
「・・・ええ、二人で、です」
「それって、もしかして、デートってことですか」
「はい、まあ、そんな感じというか、はい、デートのお誘いです」
僕への好意以外の可能性に頭を巡らせたが、何かの勧誘とかではなさそうだ。僕は、いぶかしさを感じつつも、彼女の申し出を受け入れた。
「はい、それでどこに行くのですか」
最初のデートは、彼女の住む、都心のターミナル駅から一時間ほどの自然豊かな町だった。話してみると大いに趣味が合うこともわかり、僕の方からお付き合いを申し込み、帰り際には早くもキスを交わした。
僕たちの交際は、こうして始まった。
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