5:✪ ◆ ◀︎

 イデアのUFOが直るまでは、一週間くらいかかった。

 その間のイデアは学校に来たり来なかったりだったけど、奇妙なことに、学校の誰もそのことを不思議に思わないみたいだ。

 地球にはフィールドワークで来たとか言っていたから、調査や協力の対象以外は、彼女を認識できないようになっているのかな。


 キミは、イデアが学校に来た時には彼女の調査の手伝いをして、来ない時でも放課後には毎日あの廃団地に行ってUFOの修理を手伝った。


 仕組みがわからないなりに熱意を持って取り組むキミに、イデアはちょっと複雑そうにしていた。

 そりゃそうだ。彼女にとっては家出の手助けをするようなものなんだから。

 キミの望みについて、彼女の指導者はあっさり許可を出してくれた。

 見返りにサンプル志願を求めるとは、なんて感心な労働力だ! ということらしい。

 ボクは宇宙における地球人の扱いが、かなり心配だ。


 その一週間のうちに、キミは一度だけあの男と会話している。

 広い公園の芝生みたいに髪を短く刈り込んでいるカレは、街の少年消防団に入っていた。夜回りをしている時に、廃団地に出入りしているキミを見かけたと言う。


「なんか危ないことしてんじゃないよな?」


 


 キミは笑顔を作って応じた。

 家族の前で求められる役割を演じるのと同じように、キミはカレの友達でいる。


 そんなカレの腕には、まるでそういうマスコットみたいに彼女が絡みついている。カレの恋人だ。棒つきの飴を咥えている唇には、ぷっくりと艶がある。まるでキスを誘っているみたいに。

 そんな彼女につられて、ボクの唇もそんな風になる。

 キミは白昼の廊下で、ボクをひん剥いて、ありとあらゆる淫らなポーズをとらせておきながら、その実、キミの目も心も体もすべて、吸い寄せられるようにカレだけを見つめていた。

 ひとつ瞬きをして、まるで記憶に焼き付けようとでもするかのように、カレに向かって目を細める。。もう一度そう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る