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 リナとリーナが話していたように、街の景色は急激に変わり始めていた。


 あちこちで解体作業が行われ、都会とは思えないほどに建物は次々に無くなっていった。


 直央たちが生活しているバラックの周辺も連日工事が行われ、異様なスピードで下町の景色は一変していた。


 公園は無事だったが、周りに何も無くなって直央たちのテントは吹きっさらしになっていた。


「何なんですかね。大地の掃除でもしてるんっすかね」


「はは、掃除か。その表現は間違ってないような気がするな」


 浅間の言葉に菊田はどこか納得している様子だった。


「人間を追い出して建物も取り壊して、街を掃除する。なんだかしっくりくるよね」


 公園のベンチに座り、何も無くなってしまった街を眺めていた直央は浅間と菊田が話していることについて考えていた。


 街を掃除するという言葉は確かに直央にもしっくりきていた。


 だがわざわざこんな大がかりに建物を壊してまですることだろうか。


 人間をどこか一ヶ所に集めてその間に掃除をするなんて、まるでペットや動物園の檻を掃除するみたいじゃないか。


 人間は政府のペットじゃない。


「俺、マジで腹立ってきました」


 普段は温和な直央も、このわけのわからない世の中にいい加減しびれを切らしていた。


「まあまあ直央くん。イライラしてもどうしようもないって」


「自分ももうイライラは通り越してるっす。通り越して逆にこれからどうなっていくのか見てみたいっすよ」


「はは、それもそうだね。こうなると最後まで見届けたくもなるよ。ねえ直央くん」


 菊田がそう言って笑いながら直央の肩に手を置いた時だった。


 菊田のスマートフォンからあの緊急速報メールの音が聞こえた。


 三人は同時に菊田のスマートフォンに注目していた。


「お、きたかな」


 菊田はズボンのポケットからスマートフォンを取り出すと真剣な表情で画面を見ていた。


 その様子を直央と浅間は緊張しているかのように顔をこわばらせて眺めていた。


「菊田さん……」


「ああ、ついにお呼び出しだよ」


 菊田は普段と変わりない様子で緊急メールを二人に見せた。


「でも今度は場所もちゃんと書いてあるよ。H・Bサイエンス社の特別研究施設だって」


「それって」


「うん、あのコピー人間を作ってる施設だよね」


「明日の午前十時にH・Bサイエンス社の特別研究施設にお越しください。簡単な面接を行います……」


 直央はメールの内容を読み上げると菊田の顔を見た。


「大丈夫だよ。心配いらなそうだよ?」


「そう、ですかね」


「もしもコピーを作れって言われたらどうするんですか?」


「まあ、その時は作るしかないだろうね。でも今さらそうなるとは思えないけどね」


「じゃあどうして特別施設に?」


「さあ。でもほら、他にもう人が集まれるような建物も残ってないし。ただ他に適切な場所がなかったってだけじゃないかな」


「ああ、確かにそれはあるかもしれないっすね」


「うん。とにかく明日、お先に行ってくるよ」


 とうとうこの日がきてしまったのかと思うと三人はまた複雑な心境に陥っていた。





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