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 ネットのニュースはあちこちで起こる暴動の記事ばかりが目立つようになっていた。


 それは物を壊したり商品を盗むという行為から日増しに過激化しだしていた。


 止めに来た警官と殴り合いをしたり低能人同士での言い合いがエスカレートしてナイフを突き刺したりと、負傷者が増え始めた。


 コピー人間を持つ者はすぐに政府に苦情を訴えた。


 まだコピー人間らが襲われたなどという話しはなかったが、暴動を起こした低能人は即逮捕となった。


 ただそれは表向きなだけで暴動を起こさなくても低能人がちょっとでも目立ったりコピー人間らに大きい態度をとるだけでも警察に捕まってしまうようになってしまった。


 低能人はどんどん肩身が狭くなる一方だった。


 何もしていない、皆で仲良く生活しているだけの直央たちにもその波は押し寄せてきていた。


 普通に買い物に行くことが危険になった。


 ちょっとでもコピーを持った人間と肩がぶつかろうものならものすごい目で睨まれる。


 子どもが走っていて転びそうになったところを支えて「危ないぞ」とひと言声をかけるだけでまるで犯罪者を見るかのような目で見られてしまう。


 いつ通報されてもおかしくない状況にまでなってしまっていたのだった。


 こんな世の中になると低能人たちの怒りも我慢の限界をむかえそうだった。


 いっそのこと刑務所で暮らした方が楽だと言ってわざと暴動を起こす者もいた。


 悲しいかな自ら命を絶つ者も増え始めた。


 ここまでめちゃくちゃになってようやく政府が重い腰を上げた。


 直央たちがバラックで昼食をとっている時だった。


 皆が持っていたスマートフォンの緊急速報メールの音が一斉に鳴り響いた。


「わっ」

「なんだ?」

「地震?」


 本来なら地震が起こる前に鳴る音。


 誰もがそう思っていたが、それは地震ではなく政府からのメッセージだった。


 『緊急速報

  まだコピーを作っていない国民の皆様へ。

  簡単な試験と面接を行い合格した方は政府からの援助でコピー人間を作ることができます。三日後に七十歳以上の高齢者から行います。詳細は各個人へ随時お送りいたしますので今しばらくお待ちください。なお、コピー人間を作るか作らないかその他諸々の事情などにかかわらず、一度全ての国民は政府の指定場所までお越しいただくこと。これは強制であります。

           内閣総理大臣 本宮広志』



「どういうことですかね」


 浅間は隣に座っていた菊田に聞いた。


「とりあえずその試験とやらを受けにこいってことだね」


「コピーを作るかは関係なく、ね」


 直央は浅間と菊田のもとを離れ、高齢者が集まっているテントに入っていった。


「三郎さん、メール見た?」


「ああ、直央くん。見たよ」


「大丈夫? 行けそう?」


「仕方ない、行くしかなさそうだね。大丈夫、私が皆を連れて行くよ」


「うん。皆をよろしくね」


「ああ」


 直央はそう言うとテントの中に目をやった。


 車椅子に乗らないと移動出来ない人もいる。


 一人で起き上がれない人もいる。


 三郎さんはその中でも七十歳前半でまだしっかりしていて元気だ。


 高齢者のリーダーとして直央も頼りにしていた。


 そんな移動も大変な高齢者をわざわざ呼び出して政府は何をさせる気なのだろうか。


 直央の胸騒ぎはおさまるどころか不安が大きく膨らんでいった。





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