リナの夢
リナは夢を見ていた。
野中整形外科でリナは信田が作ってきてくれたサンドイッチを食べていた。
すると何やら外が騒がしくなった。
信田とリナは外へ飛び出した。
見るとそこにはコピー人間を作れなくてホームレスとなってしまった者たちが大勢集まってデモを起こしていた。
うるさいほどの声がした。
ホームレスたちは口々に叫んでいた。
ふざけるな、人間を研究に使うな、我々の生活を返せ、などといった言葉が飛び交っていた。
信田とリナの周りにはいつの間にかコピー人間を作った者たちがコピー人間を従えてこれまた大勢集まっていた。
こっちはこっちで、ちゃんと働かないからだ、自分が無能なだけだろ、人のせいにするな、などという言葉を浴びせかけていた。
すると信田もそれに紛れて叫び出した。
あんたたちが悪いんでしょ! 人に仕事を押し付けておいて! わがままもいい加減にしなさい!
そしてリナにも叫ぶようにと信田が合図する。
リナがどうしようかと考えていると、ホームレス側にチラッと見覚えのある顔が見えた気がした。
「あっ」
間違いない。
あれは確かに自分だった。
自分はこちら側にいるのにもうひとりの自分はホームレス側にいる。
不思議に思いながらもリナはもうひとりの自分を探し始めた。
「待って」
リナは走った。
やっぱり見たことのある後ろ姿だ。
あれは間違いなく自分だ。
必死でその後ろ姿を追ううちに辺りの景色が変わった。
建物も何もない、ただの広い場所だった。
「ねえ、待って」
リナが言うともうひとりの自分が立ち止まって振り返った。
「誰?」
自分と全く同じ顔の自分が怪訝そうに言った。
「私はあなたよ。あなたは私」
「違うわ。私は私よ」
「いいえ、私はリナであなたもリナでしょ?」
「私はリナ。でもあなたは違う」
そう言うともうひとりの自分はまた歩き始めた。
「待って! どこに行くの?」
リナは自分の後をついていった。
「あなたが私ならわかるでしょ?」
「わからないわ」
「あなたはあなたの道を進んで」
「私の道?」
「あとは、頼んだわ」
「あっ」
いつの間にかもうひとりの自分は遥か遠くを歩いていた。
「待って! ねえ待って!」
声はもう、どこにも届かなかった。
リナは何もない空間にひとり取り残された。
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