第3話 孤立する山本先輩
体育祭は中一男子の徒競走から始まった。
徒競走ではなぜか陸上部より野球部やサッカー部の方が速かった。
僕はそれを生徒席から口を開けて眺めていた。傍から見たらただのバカに見えるだろうなと思った。
僕は一年の男子だが徒競走には参加しなかった。走っている姿を山本先輩に見られるのが恥ずかしいからだ。
僕は走るのが遅かった。
ひとり一年に割り当てられた生徒席に座っていると体育教師がやってきた。
「おまえなにそこで座っとんねんっ。もう徒競走始まってんぞ」と怒られた。
僕に説教するなんて、釈迦に説法だぜ?と言いたかったが、青臭いやつだと思われるかも知らないのと、明らかにこちらに非があるからそんなこと言えなかった。
僕は黙って体育教師の目を見て、無言の抵抗を示した。
体育教師は得点係だったので、持ち場に戻らなくてはいけないので、しかたなく僕のもとから去った。
同じ赤団の三年生の席を見たら、山本先輩がいた。ひとりで座っていた。他の三年生は山本先輩から離れて座っていた。山本先輩は孤立しているように見えた。さっき廊下で、すれ違った女子生徒たちが山本先輩をいじめているのかなと思った。
僕は悲しくなった。
山本先輩を守りたいと思った。
山本先輩は俯いていた。
登校したときにハイタッチした山本先輩のあのキラキラした表情は消えていた。
山本先輩の表情は青白かった。
山本先輩、元気だしてくださいよ、と言いたかったが、さすがにそんな軽いことは言えなかった。
きっと山本先輩にとって重大なことが起こっているのだろう。
僕は競技をみながら、山本先輩の様子を伺っていた。
綺麗な山本先輩の心は、非情にも、同級生から汚されようとされていた。
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