第8話 氷の鉄砲
まず、反省会を開こう。
といっても、蒼一人だけの部屋なので、脳内での反省会になる。
「まず、不用意にうろつきすぎたな」
「ああ、そうだな」
「もう少しスライムに慣れてからだよな」
「調子に乗るのは良くないぜ」
いつの間にか、自分に話して自分に答えるという、傍から見るとブツブツひとりごとを言ってる危ない人といった態だ。
「……それにしても、あれは機転が効いててよかった」
いい点もあった。
咄嗟だが、地面を凍らせてワイルドボアを転倒させたのは我ながら、ナイスプレーだと思う。
蒼はウオッシュレット(強)くらいのウオーターガンしか出せない。
攻撃方法と言えばそれくらいだ。
もちろん、物理的に木の枝を振り回すとかそういう戦い方も出来るが、葵の腕力じゃスライムがせいぜいだ。
やはり、水魔法の習得は欠かせない。
「まさか、地面を凍らせることが出来るとはね」
自分の両手をまじまじと見つめる。
要は、この空気中にはいくらかの水分があるはずだ。
普通に生きてて、湿気を感じるのだから。
その水分を集中させることで、ウオーターガンが発射されているのだろう。
水魔法が使える蒼は、大気中の水分子を自由に操れるのだ。
だから、水を手から出すことが出来る。
そして、その応用として、水分を凍らせることも出来たのだ。
「となると、こう言うことは可能なのか?」
実践一番とばかりに、外に飛び出す蒼。
拠点となる家の前で、意識を集中させる。
「アイスバレット!」
詠唱と共に、手を鉄砲のような形にし人差し指に意識を集中!
ぴゅ!
だが、指先から飛び出したのは、老人のしょんべんよりも勢いのない数敵の水。
放物線を緩やかに描き、草の上を濡らす。
「だめか……」
要は、蒼は鉄砲を撃ちたかった。
氷のつぶての鉄砲を。
だが、出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます