第7話 ワイルドボア戦
「ここは一旦、退散だな」
僕はそーっと、忍び足でその場を去ろうとする。
パキッ!
「あ……」
乾いた木の枝を爪先で踏んでいた。
「ブヒッ!?」
その音にワイルドボアが耳をピクリとさせる。
「ブオオオオオオン!」
獲物を見つけたとばかりにワイルドボアが突進して来る。
「くっ!」
蒼は咄嗟に逃げても無駄だと思った。
足ならワイルドボアの方が速い。
逃げたところで、その硬い鼻づらと牙で背中をえぐられるだろう。
ならば!
「ウオーターガン!」
シュピピピ!
明らかに今までと音が違う!
手の平から出る水の勢いが、老人の小便から、ウオッシュレット(強)くらいの勢いはあるぞ。
自主トレの甲斐があった!
「ボヒヒヒヒ!」
その水の鉄砲が、狙っていたワイルドボアの眼球にヒットする。
目をやられたことで、前が見えなくなりあらぬ方向へ体をぶつけ続けるワイルドボア。
粘膜系の場所は鍛えても硬くすることは出来ない。
蒼は始めから、硬いであろうワイルドボアのおでこや、身体を狙うつもりは無かった。
「ブヒブヒヒ!」
混乱しているワイルドボアを蒼は放置することにした。
目が見えないとはいえ、強敵であることは確かだ。
深追いはしたくない。
そして、魔力も付き掛けている様だ。
身体がフラフラしている。
「はぁ、はぁ……」
ゆっくりと歩き、体力を温存しながら帰る。
すると……
ドドドドドドドド!
背後から蹄が地面を削る音。
その音が近くなる。
「!?」
振り返る。
「ボヒー!」
やべえ!
目が真っ赤だ。
メッチャ怒ってる!
視覚を取り戻したワイルドボアが、蒼に向かって突進して来る。
「うあああああ!」
蒼の頭は混乱しつつもこの場をどう乗り切るか考えていた。
それは一瞬だったが、数々の思考が駆け巡っていた。
魔力的にもこれが最後の一発だ。
だが、発射したとしてもウオッシュレット(強)くらいのウオーターガンしか出せない。
それでもう一度目を狙う?
だめだ。
ワイルドボアはもうその手には嵌らないだろう。
ならば、ウオーターガンは使えない。
どうする。
……つまり、攻撃するのは無駄だということだ。
ならば、守備。
だけど、今の魔力とスキルじゃ、水の壁なんて作れないだろう。
否、守らなくてもいい。
回避出来ればいい。
そうだ。
「アイスフロア!」
蒼はその手を地面にかざす。
丁度、ワイルドボアが足を降ろそうとするその場所が、カチンと凍った。
「ボッ!」
凍ろに足を取られすっころぶ猪の化け物。
「やった!」
強敵が動けない間、蒼は全力で拠点に向かって走った。
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