第5話 異世界の常識
蒼は自分の手から水が出たことに驚き、これを何かに応用出来ないか考える。
「喉が渇いた。飲み水として使おう」
コップが無い。
では、自分の両手を合わせ何かを恵んでくれという様な、形にする。
両手で作ったお椀だ。
そして、頭の中でイメージ。
ピュピュピュ……
おお!
両掌から水が、しょぼしょぼ出て来て数秒後には溢れる程になった。
その両手に湧いた水を、こぼさない様に口に含む。
「うん、普通の味」
魔法で出した水だからと言って、特別上手くも不味くも無い。
水道水と同じだ。
ミネラルウオーターみたいな味がすれば嬉しいが、贅沢言えない。
水を飲まなければ生きていけないからだ。
(そう考えると、水魔法だったのはかなり運がいい)
蒼はアティナに感謝した。
これが、土、火、風とかだと結構面倒だ。
水場探しから始めないといけないし、たとえ見つけたとしても池や川の水だった場合、浄化していないので、後でお腹が痛くなるかもしれない。
そんな運試しみたいなゲームしたくない。
「さて、水の心配はないな。お腹空いて来たぞ」
食べ物が無いか辺りを見渡す。
だが、この部屋にはない。
「あ」
奥に扉があった。
そう言えば、まだ扉の奥がどうなっているか確認していない。
当座の食料と、お風呂。
アティナのその言葉が思い出される。
ギィィ……
「あった……」
扉の奥には何かの干し肉がと、野菜、そして塩が置いてある。
「やった!」
そして、さらに奥には浴槽らしき四角い木の箱がある。
「まず風呂入りたいな」
そこで水魔法。
蒼は自分の手を、浴槽にかざし、
「ウオーターシャワー!」
詠唱は何でもいいみたいだ。
兎に角イメージすること。
魔法を使うこと。
そうすれば魔力が上がり、いずれ大量の水を一度に出せる様になるはず。
ちょろちょろ……
だが、蒼の手からはほんの少ししか水が出ない。
まるで雨漏りレベルだ。
「これじゃ、いつまでたってもいっぱいにならないよ」
ため息をつく蒼。
風呂はまだちょっと先なのかなぁ……
そう思った。
そう思っていると、視界が反転し急に意識が飛んだ。
◆
目を覚ますと、見覚えのない木の天井。
何処だと思いつつ、意識を取り戻すうちに、ここが異世界でこの部屋は自分の拠点だと気付いた。
「今……何時だろう」
この世界に時間の概念は分からないが、どれくらい倒れていたのか気になる。
<<蒼さん>>
「あ、アティナさん」
<<おはようございます>>
「おはようございます、ということは、日が変わったということですか?」
<<ええ>>
どうやら意識を失ったまま夜が明けたらしい。
「僕、倒れちゃいました。魔法使ってたら」
<<今はまだ魔力が少ないのです。一気に魔力を使い続けると、魔力が尽き意識を手放してしまいます。時々休んだり、何か食べずに魔法を使いましたね>>
「はい。アティナさんから魔力を使い続けると魔法が強力になるって聞いたから」
若干、お前のせい的な感じで言って見る。
<<こちらの世界の常識を覚えておいてください。魔力を使い過ぎると、意識を失う>>
常識なのか。
だから言うのを省いてた訳ね。
ま、魔法がある異世界の常識なのだろう。
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