第4話 生活の拠点

「転生って言うより転移だなこれは」


蒼は自分の姿と記憶を見てそう思った。


「さて、どうしたもんかな」


森の中で目を覚ました蒼。

まずは拠点を決めなければ。

暗くなってモンスターが襲ってきたらどうしたらいいか分からない。

水属性の魔法と言っても、蒼はそれをどうやって使っていいか分からない。

辺りを見渡す。


「お、あれは?」


一軒のログハウス風の小屋がある。


ギイッ……


扉を開けて中に入る。

中は綺麗に清掃されていて、本棚と机、そしてベッドが置いてある。

そして部屋の奥にはもう一つ扉がある。


<<蒼さん、聞こえますか? アティナです>>


突然、頭に声が響く。

アティナの声に安堵する蒼。


「あ、この家は一体?」

<<私どもで用意した蒼さんの拠点です。ここで生活しながらスキルを磨いて行って下さい>>

「一人でですか?」

<<はい。そのための情報を底の本棚の本に記しています。そして、向こうの部屋には当座の食料と、お風呂などがあります」


かなり用意がいいな。

ウイークリーマンションみたいだ。

丁度一人暮らしにも憧れていた蒼にはいい環境ではあった。


<<まずは、水魔法を試してみてください>>

「試すってどうやって?」

<<イメージするのです水のことを、水を自らが発することを>>


おしっこなら出せるが……


<<では今日はこの辺で>>


声が小さくなっていく。

どうやら、神力に上限がありそのせいで、短時間しか念話出来ないのだろう。

だが、アティナがいつも気にしてくれているのは少し心強かった。


「さて、まずは、ここはどこなんだろう」


本棚の本を手に取る。


『モンスター図鑑 入門編』

『アイテム図鑑 入門編』


この二冊がある。

あとは、真っ白なページしかない本。

ま、つまりは自由帳か。

メモ用紙代わりか。


地図は無いのか。

そのことがちょっとがっかりした。

ここがどこで、これからどこに向かえば分からない。


「ま、仕方がない。まずはこの辺りでスキルアップして街を目指すか」


蒼は小さく決心した。


そして、アティナが言う様に水をイメージして水魔法を発動させてみることにした。


「ん~」


(やっぱ魔法と言えば、詠唱だよね)


蒼は頭の中で水を想像し、手からそれが発射されることをイメージした。


「ウオーターガン!」


ピュル!


「あ」


手の平から水が出た。


「ウオーターガン!!」


今度はもっと勢い良く水が出た。


「すごい……」


蒼は自分の手を見ながら、震えた。

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