二色目 橙

ぬいぐるみとはどこに行くにも一緒だった。

あの日、おばあちゃんにもらったぬいぐるみのようにずっと一緒にいた。

一緒に寝た。一緒にピクニックに行った。

時には一緒にお店のレジにいたこともあった。

どんなときでも、私たちは一緒だった。


ある日、また糸のほつれを見つけた。

しかも、前回と同じ、心臓の部分に。

私はもう一度縫い直すことにした。

一度ほどいてはみ出してきた綿を戻すとき、私は驚愕した。

変わったのだ。色が。

綿の色は白かった。間違いない。

詰め替えたはずの真っ白な綿から、優しいオレンジに変わっていた。


私は不気味に思いつつも、ぬいぐるみを捨てることはできなかった。

初めて自分で作ったのだ。捨てられるはずがない。

私はもう一度、真っ白な綿を詰めなおし、そっと胸を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る