第194話 運命の別れ道

「正統派ですか……」

 

 太郎はなんとなく楽しくはなさそうに答えました。


「そうじゃ」


 反対に神様は、うれしかろう、とでも言いたそうに偉そうに答えます。


「それで」


 太郎はそれでも冷静に質問をしました。


「転生というのをやった場合、僕は一体どうなるんです?」

「いや、だから今言ったじゃろうが、どっちのパターンでも正統派のおとぎ話のヒーローになれるんじゃ」

「そうではなくて、今、ここにいる僕はどうなりますか?」

「それはここで終わり、じゃ」

「終わり?」

「そう、今までの話はここで終わり、新しいお話の中で新しい人生を生きる、それが転生じゃ」

「それが転生……」

「そうじゃ」


 神様はこれで話が決まった、とばかりに晴れやかに続けます。


「さあ、どちらを選ぶ? 本当なら本人にそういう権限はなかなかないんじゃが、何しろわしが落としたのが原因じゃからな、特別に選ばせてやろう。じいさんばあさん若返りパターンか、それとも正統派桃から生まれた桃太郎か」

「若返りを」


 と、どこかで誰かが小さい声言ったのが聞こえました。


「おばあさん!」

「あ、ごめんなさい」


 おばあさんでした。おじいさんに叱られました。


「いや、わたしはどちらでもいいんですよ、太郎が太郎らしく、ひーろーとして生きるためなら若返りなんて、別にどっちでも」


 と言ってますが、顔を見たら期待しているのは見え見えでした。


「ふぉふぉふぉ」


 と、神様は笑って、


「ばあさんはああ言うとるが、さて、おまえはどっちを選ぶ? 若返りの桃か、それともヒーロータイプか?」


 神様の言葉に周囲の人が全員太郎に注目します。


「どっちにする? さあ、運命の別れ道じゃ」


 じっと黙ったままの太郎に、もう一度神様が聞きました。

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