第193話 正統派

「一応、念のために伺います。僕の場合、もしもやるとなったらそれはどういうことになるんですか?」

「うむうむ、いいだろう説明してやろう」


 神様はやっと自分のペースになったと思ったのか、なんだかうれしそうに見えました。


「まず、さっきも言うたが、おまえの場合は2つのパターンがある」

「ぱたあんですか」

「そうじゃ」


 神様は白いヒゲをしごきながら、ありがたそうに話を続けます。


「まずは、じいさんとばあさんが若返りの桃を食べて若返り、普通の若い夫婦のようにおまえの親になる方法」

「若返り、ですか……」


 太郎がそう言うと、ちょびっとおばあさんが明るい顔になり、


「若返りですって、おじいさん」


 と、小さい声で隣のおじいさんに言いました。


「その場合は僕は桃から生まれないってことですよね?」

「うむ」

「じゃあ、その時は僕は桃から生まれた桃太郎、ではなくなりませんか?」

「まあ、そういうことになるが、けどまあ、桃のおかげで生まれたので桃太郎でもいいじゃろう」

「そうなんですか。それで、もう一つはどうなりますか」


 とりあえず大人しく太郎は話を聞こうと思いました。


「もう一つは、文字通り流れてきた桃を割ったら生まれてきた、そこは同じじゃ。違うのは、ポイントをひーろータイプに振り分けるということじゃ」


 神様は、


「ここ、テストに出るから」


 という風に力を入れて言いました。


「そうしてヒーローらしく成長し、引きこもりにならず、文字通りに鬼退治に行くという人生を歩むことになる。よく聞く桃太郎の話じゃな」

「よく聞くって言われても僕は聞いたことはないんですが」

「それはそうか。まあ、よくある正統派のおとぎ話になる、とでも思ってくれればいいじゃろう」

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