第192話 異世界転生

「ええっ、そんなことなかろうて。いや、ちょっと待て、確かにここに……」


 神様は着物のふところから何か書付けを取り出し、パラパラと調べていましたが、


「ううむ、今はまだ違うのかのう……もしかして、時と場所を間違えたかな……けど、まあな、そういうのが流行する時や場所もあるんじゃよ、うむ、あるんじゃ」


 なんとなくバツが悪そうにそう言うと、開いていた書付けをピシャリと閉じ、気を取り直すようにコホンと咳払いをして、


「で、どうする?」


 と、また太郎に尋ねました。


「どうするとは?」

「転生じゃ」

「それなんですが、具体的にどういうことなんですか?」


 太郎は一応話だけは聞いてみようかと神様に尋ねます。


「僕が知ってる転生はさっきも言った通り、今の人生を終えたら次にまた生まれ変わる、そういうことなんですが」

「いや、まあ、そういうのもあるんじゃ。あるにはある、けど、今、時代は異世界転生かな」

「いせかいてんせい?」


 また初めての単語に、太郎は頭の上に疑問符がいくつも浮かぶような気がしました。


「さっきおまえが言うたように、今の人生を終えて生まれ変わる輪廻転生というのもあるが、その他にな、好きな物語の中の登場人物に生まれ変わるとか、なんだか分からんが自分が今いる世界とは全く違う世界に生まれ変わるというのがあって、そういうのが異世界転生じゃよ。転生にも色々なパターンがあるんじゃ」

「はあ、そうですか……」


 色々説明してもらったけど、太郎にも、梅さんにも、周囲の人たちにもあまりよく分からないようです。


「とにかくな、そういうのが流行っておる時があるんじゃよ」

「それで、僕にもそうしたらどうかと、そういうわけですか?」

「そう、その通りじゃ」


 神様はやっと話が通じたのでホッとしたようです。

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