第185話 すもももももももものうち

「あの、桃ってそもそもなんなんです?」

「それなあ」


 神様ぽい人……って、まあ、もう面倒だから神様にしときます。


 神様は、白い長い髭をしごきながら、


「ま、いいか」


 と、話す気になったようです。


「そもそも、この世の人だけではなく、全ての命はあっちでは桃として木にっておるんじゃよ」

「ええー!」


 広場中がどよめきました!

 なんという世界の秘密でしょうか!


「それでな、おまえ、今は桃太郎とか言うたな?」

「いえ、僕は太郎です」

「まあ何太郎でもええわい」


 神様結構いいかげん。


「その太郎か、それの入った桃をな、うっかり地上に落としてしもうたんじゃよ」

「それで川から流れてきたんですか?」

「うむ」

「それからずっと僕のことを探してたんですか?」

「うむ」

「どうしてです?」

「そりゃおまえ、そんなことしたら予定が狂うじゃろうが」

「予定?」

「うむ」

 

 神様はもう一度コホンと咳払いをし、


「そもそも、おまえはそこにいるじいさんとばあさんの子として生まれてくる予定だったんじゃ」

「え?」

「ええ?」

「なんですって?」


 これには太郎だけじゃなくおじいさん、おばあさんもちょっとびっくり。


「え、でも、太郎が流れてきた時、もう私はおばあさんで子どもを生むなんてできない年になってましたよ」

「でもまあ、生まれる予定だったんじゃ」


 「桃太郎」の原点には、おじいさんとおばあさんが桃を食べて若返り、ごく普通に子どもができてごく普通に生まれたという話だった、という説もあるらしいです。


「そっちのパターンを狙っておったんじゃがなあ」

「なんのために?」

「そりゃおまえ、神様にお願いしたら若返って子どもが生まれたって聞いたらインパクト大じゃろ?」


 って、そんな理由かーい!

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