第184話 出生の秘密
「あの、梅さん……」
「はい、なんでしょう」
「あの、僕、桃から生まれたらしいです」
「ええ、聞きました」
「そのことで、あの、僕のこと、嫌いになったりしてませんか?」
そう、太郎が気になったただ一つのこと、それは、出生の秘密を知って梅さんに嫌われてしまわないかということです。
「太郎さん、そんな心配を」
梅さんは、太郎がいじらしくて少し涙ぐみました。
だって、太郎本人も知らなかった出生の秘密のせいで、太郎は自分に嫌われたのじゃないかと悩んでいるからです。
「そんなことあるはずありません。何から生まれても、何太郎でも私は太郎さんのことを……」
梅さんはそう言って一呼吸置くと、
「ずっとずっと大好きですから!」
それだけ言って、恥ずかしくて袖で顔を隠してしまいました。
なんってかわいいんでしょうね!
「よっ、ご両人!」
「いいぞいいぞ!」
広場に集まった人たちにぴゅーぴゅーと冷やかされ、うずめ様も太郎も真っ赤になってしまい、ますます冷やかす声で広場は賑やかになってしまいました。
「こりゃこりゃ」
そんな熱を冷ますように、神様のような人がコンコンと杖で床を叩き、
「そんなことより話を聞けっつーの」
と、一つ咳払いをして、また注意を自分に向けます。
「んでな、まあ、この者は桃から生まれたわけじゃが、それがな、わしのミスじゃったんじゃ」
「ミス?」
「うむ」
神様らしい人はまた一つ、コホン、と咳払いをしました。
「まだ落とすつもりのない桃をうっかり落としてしまってな、それで今日まで探しておったんじゃよ」
「桃を?」
「いや、多分もう桃は食べられてしまっとるじゃろうと思ったので、その種かその中におった人をな。そんで今日、やっと見つけたというわけじゃ」
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