第175話 宝物

「と、いうことでね、これが僕が鬼ヶ島から持って帰った宝物だよ。これで帰ってきてもいいかなあ?」


 と、太郎が照れくさそうに梅さんはじめ、この度の鬼ヶ島遠征で知り合った人たち、持ち帰った色々な品をおじいさんとおばあさんの目の前に並べます。


「まあまあ、まあまあ」

「おやおや、おやおや」


 おじいさんとおばあさんはもう目がうるうるです。


「こんなに素敵な宝物を持って帰ってくるなんて」

「ああ、本当に太郎はわしらのひーろーじゃ!」

「よかった!」


 おじいさんとおばあさん、そして太郎が手を取り合って喜ぶ姿に、一緒にやってきた仲間たちも大喜びです。


「あの、梅さんとやら……」

「あ、は、はい」


 おばあさんが梅さんに近寄り、その手を取って、


「太郎を、よろしくお願いいたしますね」

「はい」


 その姿にまたみんながわあっと湧き上がります。


「まあまあ、じゃあ大切な弟子のうれしい門出、あたくしが一つ、お祝いの舞を舞わせていただきますわねぇえ?」


 あまてらす様がそう言って、またまた大騒ぎの踊りが始まりました。


 あ、おじいさんがあまてらす様にぼおっとなっておばあさんに叱られて、なんてことはなかったんですが、それは、師匠が前もって素顔を見せておいたからです。

 それでも多少は上の空になりましたが、元があんな方だと先に知っておいたら焼き餅を焼く気持ちが多少は押さえられたこと、それにおばあさんだって、あんなにきれいな女形の人を見たら萌えて推す気持ちにもなりますから、ただただ素直にあまてらす様に見惚みとれることができたというものです。

 

 さて、これでハッピーエンドと思ったでしょ?

 そうしてもよかったんですが、実はもうちょっとだけ続きます。

 太郎が太郎であるために、もうちょっとだけお付き合いをくださいませねぇえ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る