第172話 まずはご挨拶に

 ということで、最後に鬼ヶ島から出た一行はこんなルートを通って進みましたということを軽く書いていきましょうか。


 まず、海を渡って一番近い村、うずめ様こと梅さんといろは達の出身の村へ向かい、この人数で梅さんの実家、庄屋さんちを訪問して腰を抜かさせました。そりゃそうだろう。


「え、え、え、梅!」

「お父さん、お母さん、その節はご迷惑をおかけしました」


 一人ではなかなか村に帰れなかった梅さんも、これだけの応援団についてもらえ、勇気を振り絞って3年ぶりの帰郷です。

 そして、今いる一座のこと、今度の祭りのこと、やらし屋のバックアップがある来年からの祭りのこと、印籠のお方のこと、それから最後に、


「それで、あの、この太郎さんと、あの……」

「あの、太郎と言います! 梅さんと、結婚を前提にお付き合いを許してください!」

「ひええええええ!」


 てなことを説明した結果、なんやかんや多少混乱したものの、なんとか許していただきました。


 村に到着したのはお盆の前日、いろは達も実家に戻ってお盆休みに入ります。


「お祭りには行けるし、ゆっくり里帰りはできるし」

「本当に太郎さんのおかげです」

「ありがとうございます」

「娘たちが大変お世話になっております」

「ふつつかな娘たちですが、引き続きよろしくお願いいたします」


 3人娘とその家族、みんなで勤め先の主人である太郎に感謝の言葉を次々にくれますが、


「いえ、そのおかげで僕は、その、えっと梅さんとも出会えましたし」

「そういやそうよね」

「そうそう、あたしたちのおかげよね」

「やだ、結びの神じゃない、あたしたち」

「こら、おまえたち、調子にのるんじゃないよ」

「そうだぞ」


 と、両親に叱られる3人娘ではありますが、まあそういうことです。

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