第170話 来年の約束

「え?」


 太郎は驚いて目をパチクリ。


「あたしたち、初めて太郎さんのお宅にうかがって」

「そうそう」

「そっくりでびっくりしたんですよ」

「そ、そうなの?」


 驚いている太郎を見て、梅さんがさらに赤くなりました。


「梅さんに見せていただいたご本は何冊かあったんですけど」

「あの本はよく覚えていたのよね」

「そうそう、その上、太郎さんそっくりで、それでどうしてもぷれぜんとしたかったんです」

「そうだったの」


 太郎はなんとなくじっとしていられないような感じです。


 そんなことをやっている間に、萌えて、じゃなくて燃えていた篝火も小さくなり、後夜祭も終わりました。


「さあ、これで本当に終わりの終わり、後はまた来年だけど、来年からは色々と変わるから、それも楽しみにしておいておくれよ」


 主催者の終わりの挨拶にみんなはわあっと声を上げ、


「なにしろ天下の御用商人、やらし屋が後援者になってくれるからな」

「そうそう、戯画市場って名前もついたし」

「俺らも自分らで鬼鬼って言わず、なんかもっとかっこいい名前で呼ばれるようになろうぜ」

「そんで、印籠のお方のおっしゃるように、日本のかるちゃあってのになってやろう」


 口々にそう言って、来年の約束をして、それぞれの宿や滞在場所に戻っていきました。


 本当に祭りは終わり。

 明日からは普通の生活に戻っていきます。

 あ、この後はお盆がありますけどね。


 そして、普通の生活に戻る前に太郎は心に決めていたことがありました。


「あの、梅さん」

「え?」

「ちょっとお話が……」

「はい」


 このままでは明日、梅さんは一座のみんなとまた旅に出てしまう。

 そうしたらまた来年の「戯画市場」の日まで会えません。

 その前に、どうしても約束をしておきたかったのです。

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