第169話 星の王子さま

「へえ、どんなお話になってたんです?」

 

 太郎は興味津々で聞きました。

 太郎も「竹取物語」は読んだことがありますが、それの二次創作ってどんなのか、そしてそのお話のどこがそんなに梅さんのお気に入りになったのか知りたくなったんです。


「帝の求婚を断ったかぐや姫は月に帰るんですが、帰ったところ、こちらでは美しい美しいと言われていたかぐや姫も、月では十人並みの器量でしかなくて、あまり誰にも相手にしてもらえないんです。そもそも罪を犯して月からこちらに島流しになっていたわけですから、前科者ということで縁談もない」


 そうなのです。

 かぐや姫がどうして地球に? という疑問ですが、そもそもなんか悪いことだか失敗だかをして、「けがれた地上」にぶっとばされていたのが、許されて月に帰ることができたのです。


「それで、こんなことなら地上にいればよかった、つまらないと思ったかぐや姫は月を出て空を旅するんですが、色々な冒険をした後に、一人の公達ときんだち巡り会い、結ばれて幸せになるというお話です」

「へえ、夢のある物語ですね」

「ええ、素敵でしょ?」


 梅さんはお話を思い出したのか、紅潮した頬で一生懸命話をしてくれました。


「その公達というのは月の人なんですか?」

「いえ、ある星にいらっしゃった貴公子です」

「へえ、星の」

「ええ、星の王子さまです」


 そう行って梅さんはちょっと下を向いてしまいました。


「そうそう、そうなんです」

  

 横で話を聞いていたいろは達がいきなり参加してきました。


「あたしたちもそのお話が大好きで」

「梅さんに何度も読ませてもらってました」

「そしてね、その挿絵がね」


 そう言って3人娘、互いに顔を見合わせてクスクス笑い、


「太郎さんにそっくりなんですよ」


 と、びっくりするようなことを言い出しました。

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