第160話 らすとらん

「じゃあ、それも変えていこうよ。安全に、安心に、みんなが参加できる祭りにする」

「でも、どうすれば」

「そうだなあ。抽選はどう?」

「抽選ですか」


 太郎の案はこうだった。


「どこの見世に並ぶとかは関係なく、とにかくくじで出た順番通りに並んでもらって、自分の番が来たら好きな見世に行ってもらう。そうしたら人気の見世に向かって走ったりしなくていいでしょう」


 その方法がいいかどうかは分かりませんが、


「確かにみんなで走るのは危ないので、一度その方式にしてみようか」

 

 という方向でまとまりました。


「でも、じゃあ今日はどうしましょう」


 今からくじを作るというのも時間がかかります。何しろ「外道の鬼」の乱入から、悪徳役人やら転売屋、それに印籠の方の存在、すっかり時間が経ってしまっていますから。


「じゃあ、今回だけは、安全に気をつけるということで、最後のかけっこはどうですか?」


 ということで、みんな最後のかけっこに賛同しました。


「じゃあ、えっと、びっぷの皆さんはこの線に並んで」

「はあい」


 いろは達は広場の真ん中あたりに張った綱の前に並び、


「えっと、今日の船で着いた鬼の方はこっちの方に」


 と、港の方に張った綱の向こうに並びました。


「みんな、ちゃんと並んで並んで」

「転ばないように」

「足元に気をつけて」

「推してももいいけど押さないようにね」


 などと、わきあいあいとスタートラインにつきました。


「それじゃあ、いきますよ~みんな、用意はいいですか?」

「はあい」

「いつでも」

「おお!」

「それでは」


 うずめ様があまてらす様に目線でうながしました。


「それじゃあいきますよ、よおい……どおん!」


 あまてらす様が扇を優雅に振り下ろすと、わあっと歓声があがって最後のかけっこがスタートしました!

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