第159話 改革案

「それならそれで、申したいこともございます」


 やらし屋が、今はちょっと柔和になって、やらし度が少しばかり下がった顔で発言をする。


手前てまえが関わりますならば、鬼の祭りをそれなりにきちんと儲けの出る催しにしたいのです」

「え?」


 思いもかけない申し出です。


「今はどのような会計状態でございます?」

「いや、それは」

「えっと」


 みんなその話をされるとちょっと弱い。

 何しろ黒字になっている出見世は人気のあるごく一部。どの鬼もこの祭りに「参加することが意義がある」とばかり、一年働いて手にした儲けを全部使い果たす! ぐらいの勢いでやってくるのだ。


「俺たちは祭りで儲けようなんて思ってもいないからなあ」

「あたしも」

「そうだなあ」


 大部分の出見世の店主がそんな感じだ。


「それではいけません」


 商売のこととなるとさすが御用商人、ほおってはおけないとばかり厳しい顔になる。


「そんなことではあっという間に祭りはつぶれてしまいますぞ。これからもずっと、いつまでも続けていかなくてはならない、そうではありませんか?」


 やらし屋の問いかけに、鬼たちがわっと歓声をあげた。


「やらし屋の言う通りだ!」

「そうだ、ずっとずっと続けていかねえとな!」

「そんなこと、あたし、考えたことなかったわ……」


 中にはそう言って涙ぐむものもいた。


「あ、僕も意見がいくつかあります」


 太郎が手を上げて発言する。


「あの、出見世に向かってみんなで走るのが危ないと思います。見ていて楽しいのは楽しいですが、いつか事故が起きるんじゃないかって心配になっていました」

「あの、すでに起きたことがあります」


 うずめ様が少し困ったようにそう言いました。


「大きな事故ではありませんでしたが、やはり転倒事故は多少起きています」

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