第157話 うぃんうぃん
「いや、そう言われても……」
当のやらし屋が一番困った顔をしている。
「それに、これはやらし屋さんにとっても悪い話だとは思いませんよ」
「え?」
「やらし屋さん、鬼さんたちの出す本が読みたいんですよね?」
「ええ、まあ」
「でも、立場や色々考えて、おおっぴらに買えなかった、そうなんですよね?」
「ええ、まあ」
「じゃあ、こうしませんか」
太郎がニッコリと話を続ける。
「やらし屋さんは文化振興のために、鬼たちの出版や販売を手伝っている、そういうことにすればいいんですよ」
「ええっ!」
やらし屋も周囲の鬼たちもざわめいた。
「御用商人で、それでそういう顔で、そういう感じで、買うのがかっこ悪かったんでしょう、まとめて言うと」
「えっと、まあ」
やらし屋が恥ずかしそうに下を向く。
「ってことは、ちゃんと理由があれば本を買ったり読んだり、それに鬼の祭りに関わっても堂々としていられる、そうでしょう?」
「ええ、まあ」
「どうです、みなさん」
太郎は今度は鬼たちに語りかけた。
「みなさんも、もっともっと祭りを盛り上げたい、そうじゃないですか?」
「そりゃそうだ」
「ええ、みんなでもっと楽しくやりたいわ」
「そうだそうだ!」
鬼たちもそう言って認める。
「じゃあ、資金力のある後援者がいてくれたら、助かりますよね? うれしいですよね?」
「そりゃま、そうだけど」
「でもなあ、やらし屋だぜ?」
「うん、信じられるかしら」
「そのあたりは大丈夫だと思いますよ」
太郎がうけあう。
「だって、印籠の方がいらっしゃるでしょう。それにお役人だって、印籠の方に顔向けのできないことなんてできない、そうでしょう?」
「う……」
やらし屋から袖の下をもらって祭りをいいようにしようとしていた悪徳役人も、これには黙るしかない。
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