第156話 償う方法
「だけど、実際に色々やってきてるわけですよね、やらし屋さん」
「え、いえ、まあ……」
やらし屋も「何もやっていない」とはさすがに言えないようだ。
「じゃあ、何かして償ってもらったら、それでいいですか?」
「償うとは、どんなことを?」
あまてらす様が興味深そうに聞く。
「そうだなあ」
太郎はちょっとの間考えていたが、
「みんなが読みたい本がたくさんあれば、転売屋もなくなるし、みんなも満足するんですよね」
「ええ、そりゃまあ」
「本って、どうしたらたくさん出せるんです?」
「どうしたらいいのかえ?」
あまてらす様が面白そうに周囲の鬼たちに聞く。
「そうだなあ、紙がたくさん手に入って、そんで刷る人手がたくさんありゃ、それなりに数は出せるけど」
「そうなんですか」
「ああ。何しろ少人数でやってることなんで、どうがんばってもできることには限りがある」
「じゃあ、それをやらし屋さんに手伝ってもらったら?」
「ええっ!」
周囲が驚いてどよめいたが、一番驚いているのはそう言われたやらし屋だ。
「やらし屋さんなら紙もたくさん仕入れられるし、墨や版木も集められますよね」
「え、ええ、そりゃ」
「さすが大商人です」
太郎がうれしそうにニッコリと笑った。
「それに、そういうお手伝いする人も集められませんか?」
「ええ、そりゃまあ」
「みんな、そういうことでやらし屋さんに本作りを手伝ってもらったらどうでしょう?」
ざわざわざわ。
周囲がざわめくが、どう返事をしていいのか迷っているようだ。
「もちろん、やらし屋さんにも適正な価格の支払いをして、祭りに来られない人からの注文も、適正な価格で請け負ってもらったら、みんな喜ぶんじゃないですか?」
ざわざわざわざわ。
まだ周囲は返事に困っている。
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