第144話 黒幕登場
「素敵ー!」
「太郎さんかっこいー!」
「結婚してー!」
渦のように声が広場に広がり、立ち上がったいろは達も太郎に駆け寄ろうとしました、と、その時、
「なんですか、この有様、外道の鬼たち、何をやっているのです」
と、やや甲高い、いやらしい男の声が響き渡りました。
「あっ、あれは」
声の主は、見た目だけはまともなどこかの商家の主人らしくきっちりした装束ですが、その実は悪徳転売屋、
「ええ、お上の
ということらしい。
ちなみに、
「やらし」
とは、鹿児島の方言で、
「柔らかい」
という意味らしいです。
この「やらし屋」の主人は、表向きは、
「お客様に対して柔らかい接客を心がけております」
と、へつらうような笑顔とこの謳い文句を宣伝にして商売を広げてきた
「あんた、やらしい子やな」
と、関西弁で言うところの、
「ずるい」
とか、
「けち」
とか、
「せこい」
とか、場合によっては、標準語の、
「嫌らしい」
それから、
「エッチ」
など、そのあたりを全部ひとまとめに
「やらしい商人」
の典型のようなおっさんでした。
そのおっさんが不敵に笑ってこう言います。
「こんなこともあろうかと、お役人にも来ていただいているのですよ、ええ。あの男、善良な購買者に暴力をふるい、ケガをさせておりましたよがご覧になりましたよね、ねえ、お役人様」
それを聞いて、これぞまさしく悪徳役人! なおっさんがもう一人ひょっこりと顔を出すと、
「おう、しっかり見ておったぞ。あの男をとっととひったてい!」
そう言って下っ端の役人共に太郎を捕縛するように命令しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます