第143話 二回戦

「え、何!」

「こんないっぱい!」

「みんな外道の鬼なの?」


 さっき太郎が叩き伏せたのは先発隊だったらしく、本隊らしき集団が太郎に向かって大声をあげて群がります。


「ぶっころすぞ!」

「命が惜しかったらひっこんどけ!」

「どついたろかあ!」


 太郎の姿は荒くれたちに取り囲まれて見えなくなってしまいました。


「太郎さん!」


 うずめ様も悲鳴のように太郎のことを呼びます。


 が、


「うわあ!」


 まるで旋風つむじかぜが吹いたように、本隊らしき外道の鬼の集団がぶーんと周囲に散らばってぶっとびました。


「まだやるか!」


 中央には素手で構える太郎が一人。


 もう一度言いますが、太郎はああしてこうしてこうなったので、めっちゃ強い子なのです。


「や、やろう……」


 この状態でもまだやる気を失っていない、考えようによってはなかなか根性のある外道の鬼の一人が、釘がいっぱい突き出ている棍棒こんぼうを振り上げ、思いっきり太郎めがけて振り下ろしました。


「きゃあ!」


 うずめ様はそう叫ぶと、思わず両手で顔を覆ってしまいました。


 誰もが太郎がやられた、そう思いました。

 ですが、太郎は、もういいと思いますが、めちゃめちゃ強い子なのです。


 外道の手からとっとと棍棒を取り上げると、


「めしっ」


 そんな音を立てて真ん中から折り曲げてしまいました。


「な、なんだとお!」


 棍棒を取り上げられた外道が思わずたじたじと後退あとじさりますが、太郎はつかつかと近づくと、


「うわあ!」

 

 ひょいっとかなり大きな外道を軽々と持ち上げると、


「えいっ」


 そう言って、海辺の松の木の上まで放り投げ、てっぺんあたりに引っ掛けてしまいました。


 うわあっと歓声が上がりました。

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