第141話 外道の鬼

 太郎が初めての悩みに頭を悩ませている間にも、鬼たちを乗せた船がどんどんと大きくなってきます。


「いろはちゃんたち、がんばって!」


 太郎はキラキラとそう言ううずめ様を横目でちらちら見ながら、前方の船と、広場でスタートを待つ洗濯娘たちにも視線をやります。


 昨日と全く同じ光景なのに、今日はなんだか貼り付けた絵のように感じます。

 現実ではないような、そんな感じ。


「一番鬼が上がったぞお!」


 声と同時にいろは達を止めていたつなが落ち、みんなが一斉に走り出しました。


 が、その時、


「どけどけどけどけえええええ!」


 そんな声と同時に、


「うわあ!」

「きゃあ!」


 悲鳴が上がり、走り出していた鬼たちが吹き飛ばされたように四方八方に広がって倒れ込みました。


「え、何!?」

「え?」


 うずめ様の声で太郎も広場を振り向きました。


「いろはちゃんたち!」


 言うなりうずめ様が広場に向かって走り出します。


「え!」


 太郎も後を追うように走り出しました。


 一体何がどうなったのか分かりませんが、広場から走り出した一団が将棋倒しになっているということだけは分かりました。

 そしてそんな倒れた鬼たちの間から、数名の鬼が何かを振り回しながらまっすぐに出見世の方に向かっていくのも見えました。


「あれは!」

「え、何ですか?」

「あいつら、祭りに出入り禁止になってる『外道げどうの鬼』です!」

「外道の鬼?」

「ええ。説明は後で、とにかくみんなを助けないと!」

「はい!」


 太郎も急いでうずめ様と一緒に広場に向かって走りました。


「いろはちゃんたち大丈夫!」

「はい、大丈夫です!」

「あたしたちよりあいつらを!」

「あいつらを止めてください!」


 洗濯娘たちがそう言いながら指差す方向を見ると、なんだか派手な格好、物騒な武器を持った外道の鬼たちが、今まさに出見世にたどり着くところでした。

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