第139話 発熱
「本当に大丈夫ですか? ちょっと」
と、いきなりうずめ様が手を伸ばして太郎のおでこに触りました。
「わ!」
その途端、太郎はまるで顔から火を吹くのではないか、そんな感じで一気に頭に血が昇るのを感じました。
「やっぱりちょっと熱いみたいですね。今日はお休みされたら?」
「い、いえ、大丈夫です! いや、なんか、火のそばで作業してたからちょっとのぼせたみたいで、あは、あはははは」
太郎は急いでそう言って言い訳をして、うずめ様から離れました。
「うずめ」
「あまてらす様」
その声を耳にして、太郎は一気に血が下がるようでした。
「どうしたんだえ?」
「いえ、太郎さんがご不快みたいで」
「どれ」
あまてらす様がうずめ様と同じように太郎の額に触れましたが、太郎は今度は何も感じませんでした。
相変わらずあまてらす様は朝のこの時間からキラキラと輝くようで、本来なら、こういう方に触れられた時にこそ熱を発しそうなのに。
「う~ん、お熱はなさそうだねえ」
「ええ、大丈夫です」
太郎は急いでそう言って、今度はあまてらす様からさっと距離を取りました。ですが、その取り方はさっきとは少しばかり違っています。
「まあ、あまりご不快が過ぎるなら、医者もおることだし、一度診ていただくことですねえ」
「ありがとうございます」
太郎は丁寧にお礼を言いましたが、心はなんだか板のよう。
「ほれ、もうすぐまた鬼たちの船がやってきますよ」
あまてらす様はそれだけ言い残すと、優雅な足取りで戻っていきました。
「本当だ、そろそろ時間。今日もいろはちゃんたちは欲しいものを買えますかねえ」
うずめ様は海の方をそう見て言うと、少し笑いました。
その横顔を見ていて太郎は、やっと自分がどうしてこうなっているのかが分かった気がしました。
(僕はこの人が、うずめ様が好きなんだ)
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