第132話 前金と真珠
「え?」
「あるばいと」
「ですか?」
「そう」
太郎の申し出に洗濯3人娘はびっくり。
「ちょっと売りたい物があるから手伝ってほしいんだ。そのばいと代を払うから、それで買い物してくればいい」
「ええっ!」
「いいんですか!」
「もしもそうできたら助かります!」
3人娘は大喜びです。
元々が働き者のいろはたち、自分たちで稼いだお金でなら買いたい物はいっぱいあります。
「だけど、まだ開店準備する時間が必要だからなあ。そうだ、前金を出すから支度が整うまでそれで買い物でもしておいでよ。欲しい物が売り切れる前に」
「うわあっ!」
「いいんですか!」
「太郎さん大好き!」
太郎がいくばくかのお金を渡すと、洗濯3人娘は大喜びで買い物にでかけました。
「さて、じゃあ僕は準備するかな。宿のご主人に色々借りてこよう」
太郎がうずめ様に頭を下げて宿に戻ろうとすると、
「お優しいんですね」
うずめ様が、今度は違う涙を目に浮かべ、自分も太郎に頭を下げて、師匠の元へと急いで離れていきました。
太郎はその後ろ姿をぼおっと見つめていましたが、はっと気を取り戻すと、自分も準備のために急いで宿へと戻りました。
太郎が売ろうと思ったのは、おばあさんが大量に持たせてくれたあの「あるふぁ団子」こと、正式名称「きび団子」です。
何しろ太郎の冒険がどのぐらいかかるか分からないとばかり、
「どんだけー!」
と、見た瞬間に叫びたくなるぐらいたくさん持たせてくれました。太郎は力があるので重さはあんまり気にしなくてよかった上に、乾燥したお団子はそれは軽くなってましたから。
太郎は宿から借りてきた大鍋にお湯を沸かすと、乾燥して真珠一粒ぐらいになった団子を入れてぐつぐつと煮ました。
「これぐらい煮たら十分売るにも足りるだろう」
ぐつぐつぐつぐつ、小さな真珠がだんだんと本来の姿を取り戻していきます。
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