第130話 鬼ヶ島とは

「あの、聞いていいですか?」

「あ、はい、なんでしょう?」


 まだ潤いをたたえた目でうずめ様が答える。


「結局のところ、鬼ヶ島って、鬼ってなんなんです?」


 うずめ様と3人娘が顔を見合わせ、プッと軽く吹き出した。


「気になりますよね」

「はい」

「まず鬼ですが、それはあたしたちみたいに、こんな売ってない本を欲しがる人たち」

「それから、うずめ様みたいにこーんなキラキラした人たち」

「キラキラ?」

「そう、普通のお衣装ではないでしょ?」


 確かにそうだ。


「うん、こんな衣装着てる人、役者ぐらい」

「あまてらす様はその役者さん」

「そしてうずめ様はそのお弟子さん」

「その弟子入りに反対して勘当されたんです」


 3人娘が説明をする。


「売ってない本には本当に色々あって、あまり大っぴらに置けないような本もいっぱいあるんです」

「それで、年に一度、そういうのを持ち寄ってやり取りしましょうってのでお祭りが始まったんですが」

「そんな貴重な本、売って転売しようというやからも出てきて」

「そんな悪どい商人たちと区別をするために、キラキラじゃない人たちも」

「自分たちは仲間なんだってことを知らせようと扮装をするようになったんです」

「なるほどね」


 その本に対する燃えるような情熱、そしてその奇抜な扮装から、誰ともなく、この島に集まる人を「鬼」と呼び、「鬼の祭り」の行われるこの島を「鬼ヶ島」と呼ぶようになった、ということだった。


「あたしも最初は鬼の一人として本を買いに来てたんですが、そこで踊ってらっしゃるあまてらす様に惚れ込んで、そして弟子入りを申し込んだんですが、親が怒って、それで持ってた本を全部焼かれてしまったんです。これは、その時に焼かれた本の復刻版、中でも一番好きだった本だったので、本当にうれしくてうれしくて」


 そう言ってうずめ様はまた涙ぐみました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る