第129話 僅差でゲット

「あたしたち、村にいる時にうずめ様からそのご本を見せていただいてて」

「それでいいなと思ってて」

「あたしたちもいつかご一緒したいねって言ってて」

「太郎さんのおかげでその夢がかなって、本当に幸せです!」


 3人娘も目をうるうるさせてそう言います。


 どうやらこの鬼ヶ島の祭りというのは、一年に一度、それぞれの鬼たちが自分たちが作った「同人誌」などを持ち寄って、それを売り買いするお祭りのようです。


「でもこれ、高かったんじゃ」

「大丈夫です、たくさんおこづかいいただきましたから」

「それに、それだけじゃなく、これも」


 そう言って3人娘が他の本も取り出しました。


「尾張屋の新刊!」

「こっちは相模堂の新刊!」

「それからこっちは摂津苑に播磨郷!」


 目的の出見世をできるだけ回ったとかで、


「欲しかったのぜーんぶげっとできました!」

「本当、太郎さんのおかげです!」

「一番船に乗れたとしても、港からの距離と、あたしたち、やっぱりそこまで足が早くないから」

「そう、前日入りできて」

「少し前に並べたから」

「はい、手に入れられました!」


 なるほど、そういう仕組みのようです。


 前日、「びっぷ待遇」で島に入れた人たちが、当日の朝、船で来る人より早くに買い物に行けたら限定数全部を買い占めてしまう可能性があります。なので当日、一番船が到着するのと同時にスタートするのですが、やはり早くに入っているだけの優位は考慮しないといけないということで、少しだけ前に綱を張ってスタートラインをちょっぴり短くしてもらっているのです。


「あの数尺すうしゃくの短縮がなかったら、とっても売り切れるまでに並べませんでした」


 少しずつ謎が解け、太郎もちょっとだけすっきりしてきました。

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