第125話 あしぇいむど

「え、親に焼かれたって、勝手に焼かれたんですか?」

「ええ、まあ」


 うずめ様は言ってしまってから「しまった」みたいな顔になりました。


「すみません、つい口がすべってしまって」

「いえ」

「なので、忘れてください、せっかくのお祭り、楽しい気分で過ごしたいし」

「いえ……」


 そうは言いましたが、太郎は気になりました。


 だって、親子とはいえ、人の持ち物を勝手に燃やすなんて、それこそ鬼の仕業しわざのように思えたからです。


「あの、何を焼かれたのか分かりませんが、それって取り戻すことはできないんですか?」

「う~ん、まあ、無理でしょうね」


 うずめ様は、今はもう普通の表情になってからそう言い、


「いえ、もういいんです、大丈夫ですからお気になさらずに」


 そう言って全く元のうずめ様に戻ってしまいました。


 なので、太郎ももうそれ以上は何も聞くことができません。


 すると、今度はうずめ様はそっちの方が気になったようで、


「もう3年も前になりますが、私が鬼の世界に足を踏み入れてしまい、親がそれに反対して、私が反発してを繰り返してのことですので、まあ、私も悪かったんです。当時はまだ今より幼くて、ちゃんと話をするとかもできなかったですし、仕方がなかったんだと思います」


 と、晴れやかに言いました。


 その笑顔を見て、太郎は、


(素敵な人だな)


 と、思ってしまいました。


 その頃、うずめ様が悲しい思いをして家を出たであろう頃、自分は何をしていたかと考えると、黙ってじっと部屋で座っていただけです。


 太郎はなんだかいきなり恥ずかしくなってしまいました。

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